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朝の逆転
古い朝が来た。
太陽が西から昇り、
昨日あった出来事はそのままに、
過ぎ去った昨日が今日になった。
されど、壊れた物は戻らない。
永遠の眠りについた者も。
これから起こると知られている出来事が、
一分一秒狂いもなく起こり、
すでに壊れたモノが、
過ぎ去った昨日の出来事の、
間近にいた誰かを巻き込んでいく。
太陽が東に沈み、
月と星が西から昇り東に沈む。
夜の間も、どこかで古い朝が来て、
何が起こり、それでいて、それを回避出来ない今日を迎える。
人々は様々な未練をやり直そうと躍起になり、
さらに古い朝を迎える。
昔話で幾度も語られた戒めを、ことごとく踏み外し、
さらに古い朝を迎える。
哀しみは、さらに哀しみを重ね、パンドラの箱の底に残る希望すら、哀しみの数々に埋もれていく。
朝は明るいものだったのに、
いつから朝は逆転したのであろうか。
それでも人々は、
明るい朝を取り戻すため、もがき続ける。
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