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全部、晶のせい③
松井宅にて、夕食を取り終える晶。
「うーん・・・」
「どうかしたの晶?」
「いや!美味しかったよ、ありがとう」
確かに豪勢なコース料理をまさか他人の家で食べられるとは思わなかった。
だが、松井夫妻の厳格な視線を受けながら、慣れないナイフとフォークの食事。
こんな高そうな物ご馳走になっていいのだろうかという遠慮。
それらによって正直美味しかったが、楽しくは無い食事だった。
「私の部屋でお茶しましょうか」
「いや、遅くならないうちに帰るよ」
「あ、晶はコーヒー派だもんね。コーヒーを入れるわ、私の部屋で待ってて」
「私の話を聞いて欲しいなあ」
結局、彩の部屋で何気ない最近の事について語り合う2人。あっという間に時間は過ぎていく。
「晶・・・」
談笑を交えたガールズトークの雰囲気から一転して、クールな雰囲気を醸し出す彩。
最近、彩はこのモードチェンジをよく行うので晶は雰囲気が変わった事にすぐ気づいた。
「何?」
「改めて聞くけど小島さんとか、その秋本さんだったかな?その人達の事をどう思っているの?」
「どうって・・・昨日知り合ったばかりだよ、別に何も・・・ん?」
その時、晶は悟の言葉を思い出した。"本命を1人選ぶんだよ"
思い出したが理解は追いついていない。
(本命を選ぶ?どういう意味?うーん・・・まるで彩、小島さんや秋本さんが私に恋しているみたいな言い方だな、よくわからん)
「晶、晶・・・」
「え⁉」
「どうしたの?ぼーっとして」
「いや、彩の質問の回答を考えてたのよ」
「聞かせて」
「真面目に答えると、小島さんや秋本さんの事はさっきも言ったけど、まだよく分からないけど、友達だよ」
「わ、私は?私と晶の付き合いは昨日今日始まったものじゃない、なのにまさか一括りにされてないよね?」
「もちろんだよ(してました)」
「じゃあ何なの?」
「何なの?(どういう表現があるんだ?言葉が思いつかない・・・えっと・・・あ!悟の言ってた意味はこういう事か!!)」
全然違うのだが、晶は特に考えず答えた。
「彩は・・・私の本命だよ(親友っていう意味で)」
「そ、そうなの⁉」
「うん(これからも親友だ)」
「う、嬉しい・・・やっと思いが通じたのね・・・」
彩は涙ぐんでいる。
「え、いや、そんな、前から私たちそうじゃん」
「嬉しい!ねえ、今日はもう泊まっていかない?」
「いやいやいやいやいや、明日も学校だよ」
「ここから通えばいいわよ、何ならずっと」
「着替えとかも無いし」
「私の物を貸してあげる、どれを使ってもいいわよ」
「あ、あんな可愛い服とか、私には似合わないから・・・」
「そんな事無い、私が仕立ててあげる。そうだ、今しましょう。さあ脱いで!」
「いや、待って!彩!」
「別に恥ずかしがらなくてもいいじゃない、私たちそういう関係でしょ(恋人同士だもん)」
「そ、そういう関係だけどさ(何でも見せ合う親友だけど)」
「改めて私たちの関係を晶が肯定してくれると、胸が高鳴るわ!」
「お、落ち着こう!一旦落ち着こう!興奮しすぎだよ」
「でも・・・」
「私は落ち着いて話がしたい」
「は⁉」
晶が若干引いている事に気づいて高揚状態から我に返る彩。
「ごめん、ごめん晶!私は嬉しくてつい!!」
「いいよ、私も嬉しいから(親友としての絆が深まって)」
「晶・・・」
「でも、今日はもう帰るよ。あんまり父ちゃん母ちゃんに心配掛けたくないんだ」
「そ、そうね。確かにそうだわ、じゃあ送っていくね」
「それだと彩が戻る時に1人になっちゃうじゃん、私は大丈夫だよ」
「・・・心配だけど・・・分かった。気をつけてね、ちゃんと帰ったら連絡頂戴」
「うん、じゃあ」
「はい」
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