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悟は求める
悟は寺巡りが趣味となっていた、表向きは。
と、言うのも別に寺の歴史や建物にそれほど興味は無い。
目的は「魂について」知る事。なぜ自分がそれを知りたいのかは分からない、だが求めてしまう。
そしてそれ教えてくれる者は住職や仏僧だと思ったのだ。
始めだして1件目、2件目・・・と回ったが手ごたえを感じる事が出来なかった。
寺の者はきっちりと対応してくれたし、悟の質問にも答えてくれた。
忙しい中、無償で対応してくれた事は有りがたい。だが悟の求める何かでは無かった。
そして、今日もまた悟は、とある寺を訪れた。
外観はハッキリ言ってぼろいし、あまり参拝者が通っている様子がなさそうだ。
境内に入って周囲を見渡すとさらに建物が傷んでいる事が分かる。
「珍しいな」
悟の背後から声がした。
ぎくっとしてが振り返ると橙のジャージ姿の男がいた、齢は20代半ばといったところか。恰好はともかく頭髪は綺麗にそられている。
「ここの人ですか?」
「ああ、ここの住職の良信だよ、つっても俺しかいないけどな」
うーん・・・恰好といい話し方といい不良っぽい、寺も汚いし20代で住職、なんか怪しい事情を感じる。
大人しい性格の悟はあまりこういうタイプと会話をしたくなかった。と、同時に無駄足にもしたくない、少しは質問しようという結論になる。
「すいません、少しお話聞かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか」
「礼儀正しい少年だな、おういいぜ、暇だし」
「僕は魂の存在を信じています、僕は前世について知りたいのです」
「ふむ」
「前世を知る方法、それか魂の事について良信さんの教えを聞かせて欲しいです」
「悪い、知らん」
「はい?」
「いや、だから前世知る方法なんて、分かってたらこの寺とっくに金持ちだわ。で、魂の存在って俺信じてないし」
「えーーー⁉」
「つ―訳ですまん、ごめんな」
やはり無駄足だったか・・・
「いえ、ありがとうございました」
悟は帰宅の途に就いた。
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