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秋本佐江 本格編②
3人の前に突如現れた男。
「幸一・・・」
その男に対して佐江はそう呼んだ。
「知り合いなの?」
晶が佐江に尋ねる。
「うん・・・ま、まあ幼馴染というか友達というか、ただの同級生かな」
佐江の返答は何とも玉虫色だ。
「ふーん、まあ、とりあえず座ってもらおうよ、おー・・・」
「あー!いい!いい!必要ないよ、ごめんちょっと待ってて」
佐江は幸一と共にどこかに消えていった。
「あの二人、本当にただの幼馴染かな?」
「知らないよ、興味ないし。姉ちゃんは興味有るの?」
「うーん・・・有る!悟、ちょっくら探ってきてよ」
「やだよ。なんで盗み聞きなんかしなくちゃいけないのさ、趣味悪いよ」
「頼むよ、今度チンコ触らせてあげるからさ」
「誰のだよ」
「もちろん私の」
「無いだろ」
「はあ・・・いいなあ、いいなあ、チンコがあっていいなあ・・・あーチンコ欲しい!!」
「でかい声で言うなよ!恥ずかしいなあ!」
「私の頼みを聞いてくれなかったら、もっと大きな声で言ってやるぅ!」
「分かったよ、もう!全く・・・」
ぶつぶつと言いながら悟は2人の後を追う。佐江と幸一は店裏の路地で話し込んでいた。
「こんな所まで来るとかどういうつもり?」
「佐江が最近、蘭世町のマックに入り浸ってるって聞いたから」
「はああ、ストーカーじゃん。そういうのやめてよ」
「ば、俺は違う!佐江が最近ストーカーみたいな事してるってみんなが噂してるから、気になって来てみれば・・・あの男に惚れたのかよ」
(あの男・・・もしかして僕の事か?まあ傍から見たら、同性の姉ちゃんとは思わないか・・・とんだとばっちりだな)
仕方なく盗み聞きしながら悟は心の溜息をつく。
「・・・そうよ!悟君って言うの、かっこいいでしょ!私、彼の事が好きなの」
(おいおい、あの女。僕を盾代わりにするつもりか)
「本気なのかよ」
「本気よ、彼も私の事が好きなの」
(絶対、後で面倒になる展開だ。あの女、本当に恋愛脳だな)
「・・・やっぱりなんか信じられねえ、あの彼氏は佐江の事平気なんだな」
「あ、あんたと一緒にしないでよ。悟君は私の全てを受け止めてくれているの」
(どこの悟君の話をしてるんだ)
「帰る・・・けど・・・また話がしたい」
「私は無いわ」
幸一はその場を去っていった。
秋本佐江は何事も無かったかのように晶、悟と合流し、何気ないひと時を過ごした。まあ、悟と佐江は会話どころか目を合わせる事すらなかったが。
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