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秋本佐江 本格編④
晶と幸一の近くまで歩み寄る佐江。
「佐江・・・」
「幸一」
ただお互いの名前を呼びあう。
「さてと、話は聞いた通りよ。佐江どうする?」
晶が場を仕切りだした。
「どうするって・・・・どうも・・・しない」
「そっか、じゃあそういう事で加島君、もう佐江の事は諦めなさい」
「そ、そんな・・・」
「佐江もそれでいいんだよね」
「・・・うん」
「そんな返事の仕方じゃ気になるよ、加島君はハッキリと言ったんだし佐江もハッキリと言いきりなさい。それで本当に終わりよ!!」
「わ、わ、私・・・」
「さあ!!」
「あの・・・」
「は~、やれやれ」
煮え切らない秋本に、晶はため息をついて、一旦間を取った。
「佐江、1つずつ整理して行こう」
「うん」
「加島君の事は好き?嫌い?どうでもいい?」
「好きっていうのはどういう意味で?」
「そういうのメンドクサイ!質問に質問で返すな!じゃあ好きって事にしておく」
「いや、私、言ってないのに・・・」
「佐江ってメンドクサイのよ!しかも重いし!だから周囲も自分も困らせてしまう。人の気持ちは確かに複雑だよ、上手く伝えられなくて誤解されたり、余計にメンドクサくなったりする事もある。それでも1つずつ出来るだけ分かりやすい言葉や態度で形にして伝えていく事を怠ったらダメなの」
「う・・・・うん・・・」
「佐江の気持ちは絡まった電化製品のコードみたい、強引に引っ張ってもほどけない。かと言って放置すれば絡まりはもっと増えて、やがてコンセントに届かなくなり機能しなくなる。今、私が協力するから1つずつほどいていこう」
「うん・・・」
「加島君の事は好き?」
「・・・好きです」
「やり直したい?」
「その気持ちはあります、だけど晶と付き合いたい気持ちもあります」
「えええ⁉」
冷静に取り仕切っていた晶だが、ここで少し動揺を見せる。何とか思考回路は正常なままだ。
「あいつ(悟)じゃなくてこっち?でも女じゃん、男みたいだけど・・・」
幸一も驚き、動揺していたが・・・
「うるさい黙ってろ!!」
「はぃぃい」
晶の獅子の様な咆哮ですぐに黙らされた。
「佐江、続けるわね。私の事は置いといて加島の方なんだけど・・・」
呼び捨てになってると幸一は気づいたが、一言でも口を開くと電撃が来ると思って黙ったまま二人のやり取りを聞いている。
「加島とやり直したいのにしないのは、何が原因なの?」
「そ、それは・・・」
「ごめん、私の質問の仕方が悪かったわ。やり直す為には加島に何をさせればいい?」
「・・・あ・・・謝って欲しい」
「ビンタの事?」
「うん」
「そうだね、みんなの前で叩かれて恥ずかしかったよね。色んな噂もされただろうし」
「うん」
「じゃあ、ここからは加島と話をするけど、佐江は割り込んじゃダメ。言いたい事有ったらまた聞くから絶対邪魔しない事」
「ルール、だもんね」
「そういう事」
晶は加島の方を向いた。
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