秋本佐江 本格編⑤

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秋本佐江 本格編⑤

今度は加島との対話に挑む晶。 「加島って呼ぶのめんどくさいから『お前』でいい?」 「同じ3文字・・・」 「はい?」 「お好きにどうぞ」 「お前さあ、人前で女の子殴るって糞野郎だよ」 「は、はい」 「最低の糞野郎なのにまだ殴った彼女を追いかけるとか図々しいわ」 「た、確かにそうです」 「しかも謝ってないとかさらに糞野郎じゃん!もはや貴様に男の資格など無いわ、貴様のチン・・・は⁉」 興奮し過ぎで晶は思わずいつもの単語を発してしまいそうになる。 「チン・・・?」 「チン・・・チン・・・陳謝(ちんしゃ)しなさい!!」 「今、他の事言いかけてませんでした?」 「言ってない!話を逸らすな、ちゃんと謝りなさいって言ってるのよ」 「謝りましたよ、何度も」 「はぁぁぁ~・・・何にも分かってないわね。謝るっていうのは『ごめん』って言う事じゃないの、そんな事もわかってないから、今日までこじれたままなのよ」 一度、息を入れなおす晶。 「殴ってしまった事実は取り消せない。でもその後、彼女が精神的に傷ついている事まで配慮してフォローした?周囲に彼女が変な噂立てられない様に彼女を守ったの?お前は『佐江が避けるようになった』って言ってたけど、そういう事は陰ながら出来るでしょ」 「そ、そこまで・・・」 「『そこまで』~⁉それくらい当然という気持ちで行動するのよ」 「はい」 「んじゃ、また、佐江と話すからその間お前は私の言った事を反芻(はんすう)させて魂に刻み付けておきなさい」 「はい!」 晶は佐江の方に向き直した。 「佐江、こんな感じでどう?」 「なんか、私以上に私の気持ちを話してくれた感じ、晶凄いよ」 「で、私と付き合いたいって言ってた事なんだけど・・・」 「あ!う、うん」 「ごめん、ハッキリ言っておくね。私の心と体は多分、異性を求めている、佐江と恋人になる事は無い」 「好きな人がいるの?」 「それは全然」 「そう」 「友達でいいのならこれからも全然付き合うけど、それが納得できないならここでキッパリ決別しよう」 「ええ⁉いや、それは絶対嫌!」 「それと佐江も悪いんだよ、自分の事ばっかり押し付けないで相手の事をよく見て困っていたら、黙って待つ事も覚えていこうね」 「はい・・・でも、これだけは言わせて」 「何?」 「私、ますます貴方の事が好きになったわ」 「そりゃどうも」 「ふふ」 「佐江・・・少し、感じが明るく軽くなったよ、さっそく変わり始めている」 「晶のおかげだよ」 「じゃ、私は帰る、ここからはお二人で頑張りなさい」 「うん、じゃあね」 「あの・・・」 加島が呼び止めて来た。 「何?」 「あ、ありがとうございます」 「本当に感謝しているならそんな言葉より、チン・・・は⁉」 「チン?」 「チン・・・チン・・・チンジャオロースを私にご馳走しなさい」 「絶対他の事言いかけ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
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