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秋本佐江 本格編⑥
晶と彩、二人で昼休みを過ごしている。話題は秋本佐江の事だ。
「秋本さんって、マックで知り合ったっていう友達の事だよね」
「そう、いきなり復縁って事にはならなかったけど徐々にいい関係になるんじゃない」
「凄いね晶、恋愛の手助けなんて!でも・・・と、いう事は・・・まさか」
ワナワナと震えだす彩。
「な、なによ⁉どうしたの!彩」
「晶・・・恋愛経験があるって事⁉人の恋愛を助けられるくらい知識と経験が豊富って事なのぉぉぉ⁉」
「落ち着け彩、そういう事に知識や経験って必要無いんだよ」
「そうは言っても・・・なんか・・・」
「ホントだよ。父ちゃんの知り合いに凄い人がいてさ、その人の言う通りにしただけなんだよ」
「へえ、どんなのかしら?」
「彩、コンサルティング会社って知ってる?」
「ええ、企業が抱える問題について相談に乗り、解決策を提案する会社の事でしょう」
「そう、だけどさ余所者が会社のトラブルや問題をいきなり解決できると思う?」
「難しそうね」
「もちろんプロだから、専門的なアドバイスもするけど大事なのは、組織の澱みを失くす事らしいのよ」
「澱みをなくす?」
「そう、普段一緒にいる者同士って言いたい事や本音を黙って抱えている事が多いでしょ、それを全部吐き出させてあげるの。コンサルティング会社はそこからヒントを得る事も出来るし、本音を吐き出した社員もスッキリして働きやすくなる」
「なるほど、第三者への方が言いやすい事ってありますし、人間関係の相談やサポートならその職種の専門知識は必要ないものね」
「そう、当事者同士では解決出来ない時、第三者を立てる事で物事を俯瞰で見直す事できる」
「で、その秋本さんの場合に当て嵌めると晶が第三者として二人の間に入る事で、その二人は気持ちの整理が出来たって事ね」
「そう、だから私の知識や経験は関係ないよ」
「ふむ、納得しました」
「分かってもらえて良かったよ」
「ところで、晶のお父様の知り合いってどんな方なのかしら?」
「さあ、たまに父ちゃんに会いに来て色々と父ちゃんに教えてるんだけど、私は挨拶くらいしかした事ないから。この話も父ちゃんに言ってた事をたまたま聞いただけだよ」
「晶のお父様って教師ですわよね?教師に教えてる人?」
「まあ、私は父ちゃんの事好きだけど人としてはポンコツだからなあ。よくその人に頼っているよ、父ちゃんより若そうなんだけどなあ」
「へえ、ちなみに名前は?」
「なんだっけ?えっと・・・町・・・町・・・町川?町村?・・・忘れた」
「あらま」
二人は話に夢中で昼食の手が完全に止まっていた。パクパクと再開する。
「ああ、それと・・・」
口をモグモグさせながら晶が話し出した。
「ビックリしたのは佐江がさ、私と恋人になりたいって言い出したんだよ」
「やっぱり!!」
彩はボキッと割りばしを片手で握り折った。
「やっぱり?」
「最初に話を聞いた時から私はそうだと思っていました」
「凄いね、会った事無いのになんで分かるの?」
「分かるわよ、分かるのよ。そんな事よりそれでどうなったの?」
「どうなったって・・・さっき言ったじゃん。元カレと復縁中だよ」
「だからと言って晶の事をもう狙ってないとは限りません」
「大丈夫だよ、その気は無いとハッキリ言ったし、毎日凄い数のLINE来てたんだけど昨日は1件も来なかった。なにより、少し感じも変わりだしているんだ」
「へえ」
晶の事となると執念深い彩だが、この時は妙に納得出来た。言葉では無く、晶の雰囲気がそう物語っていて説得力があった。
「まあ、邪魔者が減った事は喜んでおきましょう」
「邪魔者?」
「何でもありません」
「はあ・・・(まさか彩も私の事?・・・それは無いか)」
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