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新たなる刺客③
テニス部エースとして最後の夏を控えている、定期テストは終わったが難関進学校を受験するので勉強時間はさらに増える、厳格な両親の躾は厳しく夜遊びなど一度も許してもらった事は無い。
そんな彩にとって昼休みは晶と二人だけで過ごせる至福の時。
そんな二人だけの時間に割り込むように下級生、佐藤夏鈴が現れた。
教室の入り口で「晶様~!」と大声で呼んでいる佐藤夏鈴。
なんだなんだ?と教室の他の生徒たちは夏鈴と晶を交互に見ている。
「うお⁉」
彩を見て、驚きのあまり思わず声が漏れる晶。
過去最大級の暗黒オーラが彩から放たれている。
雷雲が校庭を覆いつくす。
「晶・・・」
「な、なんでしょう」
「晶はご飯の続きを食べていてね、私があの子と話をしてくるわ」
「いや、でも呼ばれているの私だし」
「私の用意したご飯を放って、あの子と話をする気なの?心配しないで、他の所で待つ様に言ってくるだけだから」
「だったら、私が言ってくるよ」
「アキラハタベテテネ」
「はい・・・」
完全に気圧されていいなりになるしかない。
晶を席に残し、教室入り口で待つ佐藤のもとには彩が向かう。
晶をめぐる攻防戦、開戦の一撃は彩から始まった。
「貴方は下級生ですよね」
「は、はい、2年です」
「場所を変えて私と話をしませんか?」
「どうしてですか?私は晶様に会いに来たんです」
「見て分からないかしら?晶は食事中なの、貴方は食事の邪魔をする様な方なのかしら?」
「じゃ、じゃあここで待ちます」
「それだと他の生徒の迷惑になるでしょう、晶の食事が終わるまで、晶の親友の私と時間を潰しておきましょうよ」
「・・・わ、分かりました」
佐藤もまた彩に気圧されてしまった。
教室から立ち去ろうとする彩と佐藤。
話が違うと、晶も追いかけようと席を立ったが、振り返りざま見せた彩の顔には「ツイテコナイデ」と書いてあった。
また気圧されてしまい、晶はちょこんと座り直し帰りを待つ事にした。
それから十数分後・・・彩は一人で晶の席に戻って来た。
「あれ?あの子は?」
夏鈴も一緒だと思っていた晶。
「うん・・・自分の教室戻ったよ・・・」
声に元気が無い彩・・・さっきまで般若の面みたいな表情だったのに・・・生気が抜けて上の空だ。
「あの子と何が有ったの?」
「何にもないよ・・・」
「いや、絶対そんな訳ないじゃん。もう少し説明してほしいかなあ・・・」
「・・・晶、ごめん。またいつかちゃんと話す、とりあえずもうすぐ昼休み終わるから、戻るね」
「お、おう」
どうやら真剣に何か困った事になった様子だが、結局、晶はこの日分からずじまいに終わった。
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