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悩める彩②
公園のベンチは雨水を吸って変色している。
悟も彩も腰かける気にはなれず、立ち話が始まった。
「昨日ね、また晶の事を好きっていう女の子が現れたのよ」
そういえば、昨日の夕飯で晶がそんな事を言っていたなあと思い出した悟だが、黙って彩の話の続きを待つ。
「省略して話すと、とにかく私はその子に釘を刺しておこうと思って二人きりで話をしたのよ」
「うん」
「まあけどその子、納得しなくて。話し合いは難航してね・・・睨み合いになって・・・」
ほんと姉ちゃんの事となると見境がなくなるよなこの人、と少し呆れる悟だがもちろん顔には出さない。
「その子に近づいた時・・・近づいた時・・・」
続きを言えない彩。
「・・・近づいた時に何かを見たんだね?」
話の内容から推測して質問の的を絞る悟。
「うん・・・その子・・・佐藤夏鈴さんの腕や体にいくつかアザが有ったの」
「アザか・・・でも原因までは分からないでしょ?」
「それが分かっているのよ。最初は原因を尋ねても『あなたには関係ない』って突っぱねられたけど『見てしまった以上知らないフリは出来ない!!』って言い返して食い下がったの、そしたら話してくれた」
お節介で不正を見逃せない松井さんらしいなと関心する悟。
「端的に言うと、佐藤さんの家ってシングルマザーで母親に最近出来た彼氏に殴られたのが原因」
「なんかニュースとかでよく聞く話だね」
「そうね」
「で、その佐藤夏鈴って子を姉ちゃんに近づけたくないけど、困っている人を見捨てる事も出来なくて困っているんだね」
「・・・さすが悟君ね」
あまりにも心の的を射抜かれたので、彩は恐怖すら覚えた。
「僕の評価はどうでもいいよ、それよりどうするのさ」
「どうする?」
「結局は何もしないか、動くかの2択でしょ」
「簡単に言わないでください、動くって具体的にどうするの?」
「しょせん僕らは子供だよ、解決できるかなんて分からないけど、動くって言うのは心のままに動くって事」
「私は今、子供と話している気はしないですけどね」
「松井さんは忙しいだろ、僕が松井さんの手足になるよ」
「協力してくれるの⁉」
「そういう流れでしょ」
「ありがとう・・・ん?でも何でそこまでしてくれるの?念のために言っておきますけど・・・私は・・・」
「今さらそんな事を僕に説明する必要ある?」
「そうでした、私たちは共通の目的は・・・」
「そう、姉ちゃんの為だよ」
「・・・・・・最大のライバルって悟君かもね」
「何のことかな」
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