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悩める彩③
朝7時、悟は単独で佐藤夏鈴の家に向かっている。
彩は学園1のアイドルだし、悟もイケメンなので学校で下級生の佐藤と接触しようとすると目立ってしまう。
自ずと手段は悟が登校前に捕縛して話を聞くという事になった。
待つ事30分、人通りの少ない所で捕縛に成功した。
「ななな、なんですか」
自分の通う学校の制服を着ているとはいえ、知らない男子にいきなり捕縛されたので動揺していた佐藤だったが・・・
「どこかで見たような・・・」
少し冷静になって来た。
「もしかして知ってるのかな、僕は石山悟。晶は双子の姉だよ」
「やっぱり!晶様と一緒にいる時を見かけたことが有ったので何となく覚えていました」
「そっか、じゃあ学校も有るし単刀直入に話をさせてもらうね」
「はい(晶様の弟に好印象アピールしておかないと)」
「うん、君のアザの事なんだけど・・・」
晶様の弟と話が出来る!という期待に溢れていた笑顔が、一転して暗く沈んでいる。
「それは・・・話す事はありません、いくら晶様の弟だからって急に失礼です」
俯いて悟の目を見ないで言った。
「じゃあ、姉ちゃんになら話すんだね」
「そ、それは・・・言いません」
「だけど姉ちゃんなら気づくと思うよ、どう弁解するの?」
「えっと・・・それは・・・それは」
「ごめんね、確かに初対面でいきなり非常識な事を僕は聞いている。だけど真剣だ、君の力になりたい、悪いようにはしないから」
「え⁉」
これでは悟が夏鈴を口説いているみたいだ。
だが悟はこんな言い回しでも夏鈴が誤解して、自分を好きになる事は絶対無いと魂で確信している。
だからストレートにこんな事が言えてしまえる。
悟の思惑通り、夏鈴は悟に特別な感情を抱く事はなく"さすが晶様の弟、優しいわ"と解釈して悟に事情を話した。
夏鈴は母、妹と3人暮らし、夏鈴を殴る母の彼氏は一緒には住んでいないがよくウチに来る。
アザの事は既に夏鈴母に訴えたが、夏鈴母はこの彼氏にゾッコンで聞く耳を持たない。
学校の担任にも話したが、ただ困っているだけで、何もアクションは起こしていない。
警察や児童相談所も考えているが、妹に手を出されそうで躊躇している。
事情はそんなとこだ、悟はこれらの内容を彩のLINEに送信した。
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