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暴力彼氏撃退大作戦①
佐藤夏鈴の母の彼氏を撃退して佐藤姉妹を救う、その作戦は彩と悟二人の手によってここ数日、秘密裏に準備が進められた。
悟が新たに夏鈴から入手した情報によると月曜日、その男は絶対佐藤家に来ないし佐藤母も夕方は自宅にいるとの事だ。
この作戦はその男がいると決行出来ないので、月曜日が決行日となった。
そして時は当日、放課後を迎える・・・
晶は悟に言われるがまま、地図アプリを参照し佐藤宅に向かっていた。
晶は佐藤家の事情を全く知らない。
悟から頼まれたので細かい疑問も持たず軽い感じで用を引き受けた。
佐藤姉妹は悟が家から連れ出して、3人で過ごしている。
彩は部活をどうしても休めない。
すなわち、佐藤母一人が待つという状況の家に晶は到着した。
「こんにちはー、佐藤さんちのお宅でしょうか」
早速、インターホン越しに話掛ける。
「はい」
佐藤母は玄関引き戸を開けて直接出て来た。
見た目は若い、まだ30半ばだろうか。
「私、佐藤さんと同じ学校の3年の石山晶って言います。夏鈴さんに頼まれて忘れ物を取りに来たのですけど」
悟から受けた指示通りのセリフを言う晶。
「上級生が・・・あの子に?で、何を?」
「えっと、それがよく分からなくて・・・探したいので上がらせてもらっていいですか?」
「え、ええどうぞ」
夏鈴の住処は1階建ての長屋住宅で部屋は2つしかない、そのうちの1部屋の隅に夏鈴の私物はまとめられていた。
「なんか、カラフルで花の刺繍が入った小袋らしいんですけど、お母さん知りませんか?」
「うーん、そんなもの有ったかしら?記憶にないわね」
「そうですか、すいませんもう少しだけ探させてください」
「まあ・・・どうぞ」
ちなみにそんな物は無い、晶を佐藤宅に長居させる為に悟がついた嘘である。
晶の持つ魂の特性ギャルゲーシュジンコーの事を悟も彩も知らないが、晶には女性を惚れさせる能力が有る事を確信している。
佐藤母と晶を二人きりにさせる事で、晶に惚れさせ暴力彼氏に夢中の精神状態から解放させる。
そして改めて暴力彼氏の本性を冷静な視点で見つめ直させる事で別れさせる、もしくは晶から別れる様に命じる。
と、いうトンデモ無く馬鹿馬鹿しい作戦が決行されている最中だ。
その様な事はつゆ知らず、マジメに捜し続ける晶。
晶の事など特に気にかけずもう1つの部屋でスマホをダラダラといじっている佐藤母・・・だが・・・徐々に心境に変化が起こり始めた。
「なんだろう、あの子・・・まだ中三って事は15くらいだよね。なんだろう?何で気になるの?」
佐藤母はいつの間にかスマホ操作を止めて晶に見とれている。
見つめていると胸の鼓動はより早く高鳴る。
時間経過と共に気持ちは膨らみ続ける。
もう声を掛けずにはいられない、佐藤母が晶に歩み寄ろうとした時。
ガラガラガラガラ~ッ!!
インターホンも呼び声も無く、玄関引き戸が勢いよく開いた。
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