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暴力彼氏撃退大作戦②
佐藤宅にその男は入って来た。
齢は20代後半くらい。柄物のシャツに真っ黒のスラックス、髪は短髪でまだらに金や茶に染まっている。体格は大きく身長も180近くはある。
「真由美~」
その男が佐藤母に向かって呼んでいる。佐藤母の名前らしい。
「武太雄、今日は仕事なんじゃ・・・」
戸惑う様子を見せる佐藤母こと真由美。
「ああ・・・なんか、むかつくからやめて来た」
「そ、そうなんだ」
「いいだろ、それよりむかついてるからとりあえずヤるぞ、ん?」
武太雄は部屋の隅にいる晶に気づく。
晶は武太雄が登場してからも、全く気にせず探し物を続けていた。
「なんだあれ?真由美の娘の友達か?」
「いや、なんか上級生らしいんだけど、よく分からないわ」
「ふーん・・・ん?・・・あの女?・・・おい!!」
何やら心当たりがある様子で、武太雄は怒鳴りつける口調で晶を呼んだ。
「あ~ん?なんだよおっさん!・・・・ん?どこかで・・・」
晶は男性に偉そうな態度を取られるのが大嫌いなので、不機嫌を露わに返事する。と同時に晶もまた武太雄に見覚えが有った。
「やっぱりてめえ!!」
「ああ・・・第1話で痛めつけたチンピラAじゃん」
「なんでてめえがこんな所にいるんだよ!」
「え・・・え・・・知り合いなの?」
状況が全く理解できずオロオロするだけの真由美。
「偶然だっての、好き好んでお前みたいなブ男と再会したい女がいるか」
真由美に対して凄く失礼なセリフだが、その事を全く忘れて晶は気持ちのままセリフを吐き出す。
そして軽く肩幅を開いて武太雄と正対し、戦闘態勢に入る。
「上等だあ、ぶっ飛ばして!・・・おっと!!」
一気に襲い掛かろうとしたが躊躇する武太雄、スタンガンの事を思い出した。
「どうしたの?彼女の前だからって遠慮してるの?女子中学生に2人掛かりで襲い掛かる変態糞野郎さん」
「え、え・・・どういう事・・・」
真由美はやはりオロオロしているだけ。
「挑発に乗るかよ、武器さえ奪ってしまえばこっちのものだ。もうキレたぞ、関係ねえ!真由美の前でお前を犯してやるよ!!泣き叫んで後悔しろやあ」
「佐藤さんのお母さん!!」
晶は真由美に叫び、そして語りかけた。
「は、はい」
「あなた、こんな奴と付き合ってるの?夏鈴さんは酷い目にあっていないの?」
「いや・・・その・・・・私は・・・」
もともと意志が弱く依存症気味の真由美、この状況ではもう何も考えられないし決められない。
「しっかりしなさい!!」
「で、でで・・・でも」
「くくく、なんだ小娘?やっぱりビビってるんだろ?真由美に助けてもらおうと思ったのか?残念だがこいつは俺の言いなりなんだよ」
武太雄のそのセリフには自信が含まれている。
「おい!真由美、そうだ・・・あの小娘を抑えつけろ!へっへっへ・・・どうする小娘?真由美にもスタンガンを使うのか?」
「ふん、糞野郎が考えそうな事ね」
晶は依然として堂々としたまま構えている。
「武太雄!スタンガンって何のこと?」
「うるせえ!俺の言う事を聞け!!」
「で・・で・・・でも、私、私、あの子に酷い事したくない・・・」
「なんだと⁉そういうつもりなら、てめえとヤってる画像をネットにバラまいてやる」
「そ、そんな・・・」
「名前付きでバラまいてやる、お前の娘2人ももう学校にはいけないな」
「ああああ・・・・・やや、やります、やります!」
真由美の表情や態度に意志を感じない、まるで武太雄の操り人形にでもなった様だ。
「やれやれ・・・」
ぽりぽりと頭を掻いて、晶はふーーーっと強く息を吐いた。
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