至ってマジメ

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至ってマジメ

「なあ姉ちゃん」 「ん~?」 「姉ちゃんのクラス何やるの?」 「歌」 「へ~」 「悟んとこは?」 「それがさ~、劇だよ劇!力入れすぎだっての」 二人は新入生歓迎会のクラス出し物の話をしている。3年生が1年生をもてなす為にクラス単位で催しをするのだ。 「劇って何やるの?」 「ロミジュリ」 「ベタね~、であんたは何やるの?」 「ロミオ」 「またか」 姉弟揃って驚かず淡々としている。悟は容姿端麗でこういうモノをする時、よく主役に選ばれていた。 「姉ちゃん、ちょっと読み合わせ手伝ってよ」 「あいよ、私がジュリエットやればいいのね」 「うん」 晶は台本を持って悟の前に立った。 「ああ~!チンコ!どうして貴方はチンコなの!!」 「カット」 「何?」 「真面目にやってくれる?」 「やってるけど?」 「僕の名前はチンコじゃないよ」 「ああ、そうだったわね」 「もう一回最初から、名前はロミオだよ。天丼しないでね」 ※天丼・・・同じ事をわざと繰り返す事。 「分かってるわよ」 コホン、と軽く咳払いをして晶は姿勢を正した。 「ああ、ロミオ、ロミオ様! なぜあなたは、ロミオ様でいらっしゃいますの? チンコを切り、私に捧げて! もしも・・・」 「カット」 「何よもう!乗って来たのに」 「いつから、この話はロミオがジュリエットにチンコを切り渡すお話になったの?」 「違ったっけ?」 「真面目にやろうね」 「わーーーかったわよ」 再び、コホンと軽く咳払いをして姿勢を整える晶。 「もうチンコって言わないでよ」 「しつこいわね」 (どっちがだよ) 「悪かったわね!」 「何も言ってないじゃないか」 「双子なめんな」 「そうでしたすいません、じゃあ今度こそ頼むよ姉ちゃん」 セリフを言う前は、ルーティンの様にコホンと軽く咳払いをする晶。 「ああ、ロミオ様、ロミオ様! なぜあなたは、ロミオ様でいらっしゃいますの? お父様と縁を切り、家名をお捨てになって! もしもそれがお嫌なら、せめてわたくしを愛すると、お誓いになって下さいまし。そうすれば、わたくしもこの場限りでキャピュレットの名を捨ててみせますわ!」 「・・・・・・」 「どうしたのよ?あんたのセリフでしょ」 「あ、ああ・・・姉ちゃんて・・・ちゃんとやったら出来る子だよね」 「何言ってんの、私はいつもちゃんとしてるわよ」 「どの口が言う」
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