おたまじゃくしの憂鬱

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 一人で結論に至り、パスタの棚に目が逸れてゆく中野の横で、奈央は重大な問題に気づいてしまった。 「パジャマでゴミ出しとか行けなくなりました……」  悲しむ奈央に、中野は真顔で諭す。 「僕がいなくてもパジャマはダメだと思う」 「このコンビニでハーゲンダッツを連日買ってるのみんなにバラします?」 「そんなことしないけど」  アサリのパスタを手に取りながら、中野はくすりと笑って向き直った。 「僕は603号室だから、何か困ったことがあったら呼んでいいよ」  じゃあ、と手をひらひらさせながらレジに向かう後ろ姿に、なんとなく掴みどころを見つけられそうな予感に胸がふくらんだ。  入れ替わりのない職場において、人間関係はなにより大事なのだ。適度な距離感は必要だが、踏み込める一点があるだけで気持ちの親密さは変わってくる。  他の先輩たちとは女子トークで親しみを持ち、中野とはご近所つながりで打ち解けられそうで、奈央は前途に希望を感じて嬉しくなる。  ハーゲンダッツまでも輝いて見えて、神々しいその一つを手に取りレジへ向かった。
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