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「あのさ、まだ店開けないから、よかったら店くる?珈琲くらいならだすよ」
椿は二人の様子を見て、このまま素通りできないと思い言った。
空もアリサをチラッと見て、こんな道端で二人で話すより誰かがいてくれた方がいいと思いった。
「あ、じゃあ申し訳ないですけど、少しお邪魔してもいい?」
「どうぞ、どうぞ」
空はアリサを連れて椿の店へ行き、端にあるボックス席に座った。
「soraくん体調はどうですか?」
店に入るとアリサが話しだした。
「うん、大丈夫だよ」
「よかった。…それで、あの……あの記事の事は本当にごめんなさい。でも……私本当にsoraくんのことが好きで、それは嘘じゃないから……」
必死な目で訴える。
「ん〜、例えそうだとしても、僕はもう君を好意的には見れないよ。アレのせいで大変な目にあったんだ、君のやった事、僕は許してないよ」
響とひと悶着あったことを思い出した。
「ごめんなさい……」
しょんぼり項垂れる。
「あの後、すぐに謝りたかったんだけど、事務所に言っても「会っちゃ駄目」って全然取り合ってもらえなくて。こんなふうにしなくちゃ会えなくて」
「君事務所ごと訴えられても仕方ない事したんだけどね。謝罪もさせてもらえないって……」
「それで、こんなの言えた立場じゃないんだけど、やっぱりどうしてもsoraくんに曲書いて欲しくて。あの三曲ともすごく素敵で」
「え? 曲の件はお断りしたよね。あのデモも処分してね、もう忘れちゃったし、たとえ覚えていても、君への気持ちがあの時とは全く違うからね」
「そんな…」
「それに三曲ともあれだけじゃ使い物にならないよ。だから僕の名前使って何処かに流したりしないでね」
「そんな事しません」
「それに悪いけど、君とはもう関わり合いたくないよ」
「どうしても…?」
「いや、頼んでくる神経が理解できない」
「やっぱり無理なんですね」
「諦めてね。だいたいこんなのフラッと来て君が一人で進めていい話じゃないよね」
「そうですね。でもsoraくん絡みは事務所動いてくれないから」
「あたりまえだよ」
「アリサ泣きたい」
「あのさ、僕も週刊誌とかの適当な記事にはうんざりしてるけど、あの盗作っていうのは本当なの?」
「私は嫌だって言ったのに大丈夫だからって」
「あー本当なんだね。どうりで君からは同じ匂いがしないと思った」
「匂い?」
「そう、僕が出会ってきた同じように音楽を生み出してる人って何かしらコウ……通じるようなおんなじ匂いがするんだよ、君には最初に会った時からそういう物がまるで無かったから」
「ごめんなさい。そうした方が今どき売れるからって」
「ホント酷い事務所だね」
「……」
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