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「でも僕は曲に関しては被害に合ってないから大丈夫だよ。勿論自分が生み出したものを盗られたら死ぬ気で戦うけどね」
ニッコリ笑った。
その時
『ガチャッ』と扉が開いて、息を切らした雅が入ってきた。
「空くん、黙って出ないでって言ってあったでしょ。何でこんな……」
「あ、雅ちゃん」
椿をチラッと見て。
「椿さん?」
椿はニコッと笑った。
「そうですよ、椿さんが連絡くれたんです。あなたもきっと今頃事務所で大騒ぎになっていますよ。また空といる所を撮られたりしたらこちらが迷惑ですから早くお帰りなさい。事務所まで送りましょうか?」
雅はアリサに言う。
「いえ、大丈夫です。ご迷惑おかけしました……帰ります」
しょんぼり肩を落として帰ろうとするアリサの後ろ姿に声を掛ける。
「君さ、もっと君のこと考えてくれる事務所探したほうがいいかもね」
「え?」
「この前の事も、今日フラッとここに来ちゃう事もちゃんと見守ってくれるマネをつけてくれる所を」
「……」
アリサは空をじっと見る。
空はハッとしてアリサに言った。
「あっ!僕のところはダメだよ。誰かの面倒なんて到底見れないからね」
両手をブンブン左右に振る。
「一瞬誘ってくれてるのかと思いました」
「いや、ソコは自分で頑張って」
「はい……」
「歌上手なんだから、いつか僕の方から歌ってくれって曲持っていけるように続けてよ。僕もそうだけど、君の事応援してくれてるファンの子達に恥ずかしくないようにさ」
「はい!」
大きく返事をして帰っていった。
***
「空くん、大人になりましたねぇ」
雅は含みのある口ぶりで空をからかった。
「僕はいつもちゃんと大人ですけど、なにか?」
「え?」
雅と椿は顔を見合わせて笑った。
「ホントにファンの子達の事考えてますか?」
空をジッと見る。
「当たり前じゃない……わかったよ、帰って仕事するよ」
唇を尖らせる。
「そうしてください」
「椿さん、ありがとう。また遊びにきまーす」
「おー、またね」
椿は作業をしながら片手をひらりと挙げて答えた。
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