# 序曲

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# 序曲

 初夏の日差しが眩しかった部屋の中には、いつの間にか夕闇が訪れている。  小林風花(こばやし ふうか)は静かに目を開くと、目の前には静かに寝息を搔きながら眠る山形健一(やまがた けんいち)の顔がある。  健一は風花が通う女子高の音楽教諭だ。  二人の関係は風花が高校二年の時、必須科目に指定されている音楽の成績が悪く、何とか単位を貰おうと陰口覚悟で色目を使った。しかし、健一はそんな小手先の罠には引っかからず、真っ当な方法で単位を取得させた。  それからだ。  お互い、意識し合うようになり、風花は恥を忍んで告白した。健一の答えは『ありがとう・・・。でも、高校を卒業するまで待つから、今は焦らないで・・・』という物だったが、風花の気持ちは収まる事が出来ず、SNSやメールでやり取りをしているうちに、健一の方が根負けをしてしまった。 『君はまだ高校生だ。だから、無理な関係はしない。会うのも月に一度、部活の無い日曜日だけ・・・』  健一が応えてくれた気持ちは嬉しかったが、『何で月に一度だけなの?』と聞いてみた。  健一は優しい瞳で風花を見つめながら、『君を大事に、守りたいから』と答えた。  それでも、時間が経てば自ずと男女の関係に発展する。その頃にはお互いに将来の事を考えていた。
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