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 早く出るぞと言う割に唇を離さないレイナルドをなんとか引っ剥がし、イザベラに声を掛けに行く。が、しかし  「イ、イザベラさん!?」  「あら、もういいの?あと二分くらいはイチャついてても許してあげたのに」  ルイーゼは自分の目を疑った。  なぜなら宮の出入り口付近に小荷物を置き、フリフリレースを脱ぎ捨て旅装で帯剣するイザベラは、屈強な戦士そのものだ。女子力高めのイザベラ感がまるでない。  そして今はルイーゼが初めて感じたゴンザレス感しかない。いや、あなたはゴンザレスだ。  「ゴンザレス、状況は?」  (ほ、ほんとにゴンザレスっていうの!?)  “イザベラ”とはどのような経緯でつけられた名前なのか。そんなこと気にしている場合じゃないのに物凄く気になる。  「既に家族は回収してアヴィラスに向かわせたわ。アヴィラス国王には早馬を飛ばしてある。アタシたちは追い付けばいいだけ」  (あ、やっぱり一人称は“アタシ”なんだ……)  しかし“家族”とは?それにアヴィラスの父に早馬?一体なんのことやらさっぱりだ。  「ルイーゼ、本当なら二人きりで今後のことをじっくりしっぽりずっぽり説明してあげたいんだけれど、残念ながら今はその時間がない。とりあえず黙ってついてきて」  レイナルドの言葉に促されローズ宮を出る。するとそのすぐ近くにそびえ立つ木の幹に、毛艶のいい二頭の馬が繋がれていた。  「ルイーゼは僕と共に」  ヒラリと舞うように馬の背に乗ったレイナルドがルイーゼに向かって手を差し出す。  「わたくし、馬に乗るの初めてです」  自分と一緒では迷惑を掛けてしまうのではないだろうか。  しかしそんな心配は無用だった。  「良かった」  「え?」  「君の初めてを一つ僕のものにできる」  「レイナルドさま……」  「さあおいで。この子は気性の優しい子だ。きっと君を快適に乗せてくれる」  きっとこれがアルセニオだったら、“足手まといめ”とか“そんなこともできないのか”と、人目も憚らず罵倒されたことだろう。  けれどレイナルドにとって【できないこと】は【これから一緒にできること】で、それは幸せなことなのだ。  ルイーゼはレイナルドの手を取った。  するとあっという間に馬上に抱え上げられる。  「急ぐから少し怖いかもしれないけど、絶対に落とさないから安心して。しっかり掴まっていてね」  後ろから包み込まれるように手綱を引く手が回されて、少しだけ身体が強張る。    「嬉しいな……」  「なにがですか?」  「だって、これって“新婚旅行”ってやつだろう?」  「……は?」  「初夜を迎える前に君のお父上にも挨拶ができるし」  「初、初夜!?」  「どうしよう……アヴィラスの広大な自然のパワーを浴びて僕……もしかしたら荒ぶっちゃうかも……」  もしかしなくてもレイナルドからは荒ぶる予感しかしない。  フォルメントスに姦通罪が無くて本当に良かった。  馬上で揺られながらルイーゼは考えていた。荒ぶる大蛇が無事に自身に収まるのかを……    
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