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30 *乱暴な表現があります
「誰だお前は!衛兵はなにをしている!?」
「異母弟の顔も忘れたのか?股間同様、脳味噌も軽いようだな」
「なんだと!?おい、お前ら!こいつを捕らえろ!」
しかし兵士たちはアルセニオの命令など聞きはしない。痺れを切らしたアルセニオは立ち上がり、レイナルドに向かって殴りかかった。
しかし勢いよく振り上げた拳は空を切り、よろめいたアルセニオの腹部にレイナルドの膝蹴りが直撃した。
「うぐぅっっ!!」
「この程度で終わりかよ。つまらないな。こんなんで終わられたら“お仕置き”にならないじゃないか」
レイナルドは床に倒れ込んだアルセニオの顔を靴の踵で抉るように踏み潰す。
「お、おやめくださいませ!!」
側で見ていたカミラが声を上げ、レイナルドは顔を向けた。
「おや、君……月のものは終わったのかい?」
「なっ……!どうしてそれを!?」
「さあ、どうしてだろうね。でもそんなことどうでもいいんだよ」
「ひぃっ!!」
カミラは喉元に剣先を突き付けられ、恐怖に顔を引きつらせた。
「……君も同罪なんだよな。どうしようか」
カミラはレイナルドの言う“同罪”の意味が分からず混乱する。
「……や……やめろ……」
「勝手に喋るなよ。耳障りだ」
顔を踏む足に力が加わり、言葉を発することを封じられたアルセニオから、うめき声のようなものが漏れた。
しかしそんなことは歯牙にもかけず、レイナルドはカミラに話し掛けた。
「ねえ、僕の質問に正直に答えてくれたら君の処分について少しは考えてやってもいいよ」
「し、質問?」
「そう。こいつによく聞こえるように答えてくれる?こいつ、男としてどうだった」
「えっ……?」
「閨のことでさんざん妃のことを悪く言っていただろう?君の目から見て実際どっちが悪いと思う?こいつは馬鹿だから、はっきり言われなきゃわからないんだ。だからよく知ってる君が教えてやってくれないか」
カミラは迷ったが、目の前の美しい男はさっき自身のことをアルセニオの“異母弟”と言っていた。ならば男は幽閉されているという第二王子レイナルドに違いない。
そしてどう考えてもこの状況はアルセニオが不利。判断を謝れば家が潰れるかもしれない。アルセニオにつけばどうなるか……それは火を見るより明らかだ。
カミラの瞳から恐怖の色は消え、新しい獲物を狙う魅惑的な光が宿る。
「ご寵愛いただいた身でこのようなことを申し上げるのは気が進みませんが……アルセニオ様には女性を満足させることはできませんわ」
「へえ、どうして?」
「だってその……腸詰めよりも小さいんですもの!長さも、まだ腸詰めの方がましなくらいですわ」
これに周りを取り囲んでいた兵士たちは目を丸くした。“まさかそんな……”と若干ざわつく声も。しかしカミラはお構いなしに続ける。
「それなのにご自分では大きいと思ってるから余計質が悪いのです。きっと乳母や侍女たちが、王子だということでなんでも褒めちぎったのでしょう」
「へえ。では性技のほどは?」
「ご自分が満足するまで胸を触ったら挿入して終わりです。これで文句を言われたんじゃルイーゼ様もお可哀想ですわね」
レイナルドの足の下、アルセニオは信じられないものを見る目でカミラを見つめていた。
カミラが話し終わり、レイナルドの足が離れたと思ったら再び蹴りが入り、アルセニオは仰向けにされた。
「……な……なにを……する……」
レイナルドは剣でアルセニオの下穿きを切り裂いた。露わになった彼の分身に、周囲の視線は釘付けになる。
「これはまた……近くで見ると赤子のようじゃないか」
兵士たちからクスクスと笑いが漏れ聞こえ、アルセニオは羞恥に震えた。
「あの……貴方様はもしや第二王子のレイナルド殿下であらせられますか?」
カミラはアルセニオのことなど既に眼中になく、レイナルドの側に歩み寄り上目遣いで尋ねた。
「そうだったらなに?」
「わたくし、カミラと申しますの。デルクルス侯爵家の長女ですわ」
「だから?」
「わたくしならレイナルド殿下のお役に立つことができますわ。色々と……」
カミラがレイナルドの袖口にそっと手を添えた瞬間、彼女の身体は壁際までふっ飛んだ。
「……腕を斬られなかっただけ有り難いと思え。この二人を縛り上げて連れて来い」
不快そうに眉間に皺を寄せ、袖口を払いながらレイナルドは部屋を後にする。
気を失ったカミラが兵士に縛られる様を同じく自身も縛られながら、アルセニオはただ呆然と見つめるしかなかった……
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