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5
混乱するルイーゼだったが、レイナルドにそんな事情はわかるはずもない。
彼からしたらルイーゼは、夜這い目的の彼の熱狂的な信者かなにかなのだろうから。
「……どうしてそんな怯えた顔をしているの?」
「えっ!?」
恐怖に引きつるルイーゼの顔を訝しげな表情で見つめるレイナルド。
「欲しくて仕方なかった僕がこんなに近くにいるんだよ?好きにしていいんだよ?」
出会ったばかりの女にあっさりすべてを差し出そうなんて王族のすることではない。やはり彼はレイナルド王子ではなく別人だ。
となれば早く誤解を解いてここから離れた方がいい。
「あ、あの、人違……ひっっ!!」
「……人違い?」
ボサ髪の隙間から覗く青灰色の双眸が妖しい光を宿し、ギラギラと鈍く輝く。
「あの、どうか落ちついて話を聞いて下さい。私、王宮を抜け出してきて……」
「わかってる。僕に会うためにわざわざあの魔窟から脱出してきたんだろう?もう戻らなくていい。僕が君の身も心も慈しんで、以前の暮らしなど忘れさせてあげるから」
そう言うとレイナルドはルイーゼをゆっくりと後ろに倒し、体重をかけないように自身の身体を上に重ねた。
下半身にとてつもなく硬く巨大ななにかが当たっているのは気のせいだと思いたい。
「ひ、人妻なんです!!」
「こんな夜中に僕のところまで逃げ出してくるくらいだ、どうせひどい夫なのだろう?大丈夫だ。僕は過去なんて気にしないし、生涯たった一人を愛し守り抜くと決めている。だから……」
レイナルドはそう言うとおもむろに半身を起こし、身にまとうガウンによく似た衣服に手を掛けた。
服の下から現れたのは、不健康そうな青白い顔からは想像もつかない精悍な肉体。
逞しそうに見えて、脱ぐと下っ腹がぷにぷにしている夫アルセニオとは大違いだ。
驚きを隠せず目を見開いたルイーゼに気を良くしたのか、レイナルドはニヤリと妖艶な笑みを浮かべ唇を一舐めすると、今度は下穿きの紐を解き出した。
「⁉※∆%$@#&\℃§¶‼‼‼‼‼‼‼‼‼」
あまりのことに頭の中が真っ白になる。
(だ、大蛇……!!!)
主張の激しすぎる彼自身が、ドクドクと脈打ちながらルイーゼの目の前で鎌首をもたげた。
まるで追い詰めた小動物をじっくりといたぶりながら舌舐めずりし、捕食の時を待っているかのように。
「可愛い人……驚いてしまった?でもこれは君だけのものだよ。だから目を逸らさないでちゃんとよく見て?」
よく見てます。見れば見るほど凶悪なのに、不思議なほどつるんとしてて綺麗な色をしてるとか思っちゃってます。目の前の恐怖から逃避せんと、ルイーゼの思考がおかしな方向へと舵を切り始めた時だった。
「痛っっつ!!」
ゴッ、と鈍い音がしたかと思ったら、レイナルドが後頭部を押さえてうずくまった。しかもルイーゼの下腹部に。
「いやぁぁぁぁあ!!」
「い、痛い……僕は死んだのか……でもとても温かくていい匂いだ……ここは天国の花畑なのか?」
レイナルドはルイーゼの下腹部にスリスリと頬擦りし、思いっきり鼻から香りを吸い込んでいる。
「やめてぇぇえ!!」
叫びながら両手で必死に下腹部に沈む頭を押すが、押し返す首の力が強すぎてびくともしない。だがしかし次の瞬間、レイナルドの身体が宙に浮いた。
「いい加減にしなさい!この童貞が!!」
宙に浮きながらも未練がましくルイーゼのドレスの裾を掴むレイナルド。その身体を軽々と持ち上げてこちらを見下ろしていたのは、青々しいひげの剃り跡と見事な割れ顎で、フリフリのレースがこれまた素晴らしいドレス姿の男性だった。
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