人里、あるいは山奥から麓まで

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 少し移動すると、蛇がいた。  再度、鼓動は強くなる。  蛇はカエルでも食べてきた後なのか、腹が異様に膨らんでいた。  僕は駄目元(だめもと)で聞く。 「あの、どうすれば人間と話せますか?」  蛇は答える。 「いや、何故それを私に聞くのかがわかりません」  僕にもよくわからない。 「いや何かお伽噺(おとぎばなし)とかで、あなた達はよく人間を(そそのか)したりしてるみたいじゃないですか」  蛇は満腹で気だるいのか、僕を遠巻きにそそくさと通過しながら答えてくる。  それが話をする時の態度かと、僕はまた腹が立った。 「いやそれを言えば、お伽噺では大抵の動物が人間と意思疏通を図れていますよ、蛇だけじゃない。お伽噺という雰囲気が成せる現象ですよ」 「雰囲気ですか……」 「あと蛇は嫌われものですからね。別に人間と話す必要もない。あなたもそうでしょ?」  そう言うと、蛇は足早に立ち去った。  何故、犬にしてもハトにしても、皆僕からそそくさと離れたがるのか、悲しい気分にもなってくる。  避けられるのは慣れているが、こうも立て続けに冷たくあしらわれると、良い気はしない。
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