人里、あるいは山奥から麓まで

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 草木の匂いが香り立つ。  何かをするには良い季節になったのかもしれない。  僕の心は少し高鳴る。  しかし見渡すと以前と変わらない景色に少し気は滅入り、僕は欠伸(あくび)を噛み殺した。  少し歩くと、犬に出くわす。  また少し、胸は高鳴る。  犬は僕と同じように、欠伸を噛んでいるようだ。  とりあえず僕は犬に聞く。 「あの、突然なんですが、どうすればあなた達みたいに人間と喋ることができるんですか?」  僕は知りたい。  犬は答える。 「いや別に、私は人間とは喋れませんよ」  そんなことは無いだろうと、僕は思う。 「いや、あなた達犬は、お手、とか、お座り、とか、なんか人間の言葉に対して反応するらしいじゃないですか」  犬は僕に目を合わせず答える。首すら振らない。  その反応に、僕は少し腹が立つ。 「ああ…… あれは雰囲気で人間に合わせてるだけですよ。言っていることがわかるわけじゃない」 「雰囲気ですか……」 「そうなんです」  であれば、犬なんて役には立たない。  これ以上、犬なんかに用事もないので、僕はその場を立ち去った。
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