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ピピピピッピピピピッ
スマホのアラームが朝を知らせる。
私は自分の肩にかかった重たい腕を外して、スマホを手に取る。
時刻は7:00。
むくりと起き上がって、体を伸ばした。
少し冷えた外気が私の素肌を通り、思わずぶるりと震えてまた布団に潜り込む。
同じく素肌のまま眠っている夫は、子どものような顔ですやすやと眠っている。
「ケイくん。朝ですよ。
起きて」
けれど、彼は訝しげに眉を顰めるだけで、起きない。
今日も、明け方近くまで私を離さなかったせいだ。
加減を覚えてくれと頼むけど、彼は毎晩私を求める。
まるで触れなかった半年間を埋める様に。
おかげでこっちも寝不足だ。
「ほら、起きて。ケイくん。
仕事に遅れちゃうよ?」
「…んーーー…なんじ?」
「もう7:00。ほら、朝ごはん作ろう」
「うん…」
一緒に眠る様になって知った事だが、彼はあまり朝が得意じゃないらしい。
「…パンツどこ?」
「はい、これ」
ベッドのあちこちに散らばった自分達の着替えをかき集め、彼に渡す。私も手早く着替えてリビングに出た。
あくびをしながらコーヒー豆を轢いて、眠気覚ましの一杯を作る。
彼も仕事着に着替えて、ようやくこちらに来た。
キッチンに立っている私の横にきて、コーヒーを啜る。
「どう?目覚めた?」
「ああ、いつもありがとう」
お約束のセリフも聞けて私も満足。
二人でエプロンを着せ合って、朝食を作る。
「今日は遅い?」
「いや、いつも通りかな」
「じゃあ、今日は手巻き寿司にしようかな」
「やった。なるべく早く帰る」
すっかり素直になってしまった彼に、私は少々物足りなさを感じている。
あの素直じゃない感じも、可愛いと思ってたんだなーと今更ながら気付いた。
「じゃあ、行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
いつもの様に彼に鞄を差し出す。
それともう一つ。行ってらっしゃいのキスをするのも増えた。
チュッと彼の唇にキスをする。
だけど、
「…んっ!?」
頭を抑えられて舌を入れられたと思ったら、知らぬ間にそのまま壁に押し付けられた。
すっかり両思いになった事で浮かれた私が提案した事だが、たまにこうやって暴走されるため、少し考えものだ。
彼の肩を叩いてやっと解放される。
「…会社、行きたくないな」
「…じゃあ、休んだら?」
「…いや、行かなきゃ」
「…じゃあ、頑張って」
このやりとりもほぼ毎朝している。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
きっと私は、今夜も彼に愛されるのだろう。
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