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キャラクター紹介
こちらのイラストはhttps://twitter.com/4hm33?s=21&t=x6gaGv1om8fCyq6uIrC65Q
にんげんのあかちゃん/AHMBB
の画像メーカーにて作成させて頂きました💐
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とあるファーストフード店。
ガラス張りの店内で、親子連れが楽しそうに食事をしていた。
反射するガラスに映ったその家族をじっと見つめる。
羨ましい…だとか、憧れ…だとか…そんな感情だったのかは分からないが、ただぼんやりとその"当たり前"の形を見つめていた。
「すみません、席が満席で…向かいの席、良いですか?」
ハッとして、ガラスから声の主に視線を上げた。
そこに立っていたのは高校生か、または大学生らしき青年で、トレイを手に困り果てた顔をして佇んでいた。
俺は辺りを見渡し、満席で賑わう店内を困惑の表情で確認すると、彼に視線を戻して遠慮気味にどうぞと呟いた。
大学の課題をしていたはずの手はすっかり止まっていたから筆箱にシャーペンをしまいながらノートを閉じる。
前の席に腰を下ろした青年は片付けを始めた俺に声を掛けてきた。
「俺が来たからですか?良ければゆっくりしていってください…なんか、申し訳ないです」
彼の身なりは全身黒づくめなのに、清潔感があり、言葉遣いも丁寧で、何よりこの混み合った店内の異性の視線を独り占めにしてしまうような顔立ちをしていた。
そのせいか俺は肩を竦め、どうにも居心地悪いのを隠せずに言葉を返す。
「いや、どうせ進んでなかったから帰ろうと思ってたんです。気にしないでください」
そう言って椅子にかけていたリュックに腰を捻りながらノートや文房具をしまった。
「…あの親子…知り合いですか?」
「は?」
反射的に返事を返した俺に、向かいに座った彼は前髪で隠れた目とは裏腹に薄い唇をニヤリと引き上げた。
「な、何でそんな事」
「ガラスに映ったあの家族を…あんまりに熱い眼差しで見つめているもんだから…つい気になってしまって…」
彼の言葉に目が泳いでしまう。
「きっ気のせいじゃないか?俺は見てなんてない」
「見てましたよ」
「見てないったらっ!」
その言い合いの果てにまたハッと我に返る。
周りを気にしながら、立ち上がりかけた腰を下ろして彼に小さく呟いた。
「人を変質者みたいに言わないでくれよ。じゃ、俺はこれで」
今度こそ立ち上がりかけ、テーブルに手をつく。
その手をギュッと掴まれ、俺は更にギョッとした。
警察にでも突き出されるんじゃないかと思ったからだ。
「ちょっ!離せよっ!」
「俺、そこの高校なんです。三年、橘優里(タチバナユウリ)」
「…そ、そう…じゃ」
「待って下さい」
「何なんだよ」
「聞いといて名乗らないつもりですか?」
橘と名乗る高校生に握られた手を見下ろした。
「俺は…あっちの大学…一年。長谷光(ハセヒカル)…コレ…離して貰って…いいかな」
橘はニヤリと笑い「長谷…光さん…」と意味深に呟いた。
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