本日の活動は「象の歯磨き粉」です

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本日の活動は「象の歯磨き粉」です

‘’高校といえば何だろう。 やっぱり部活は運動部、それか文化部では演劇部か漫研、それか吹奏楽部が無難? 確かに今挙げたところではTHE青春って感じがある気がするし、面白そうだよね。うんうん、分かるよその気持ち。たなかもそう思う? ...え? いやいや、そこは科学部でみんなで学校をゲシュタルト崩壊させましょうぞの会を開くことに満場一致で決定だろそこは。‘’ 普段通り部活に集まり、春夏秋冬いつでもショートカットの部長こと、‘’科学部唯一の二年生‘’の凪が一人今日の部活動を一人練りながら、『たなか』と名付けられた骸骨に小声で何か話しかけている。正直傍から見たら只のヤバイやつだけど、俺にとっては最近こいつのマイブームになっているワードの一つの‘’おもしれー女‘’に該当する。 いや何いってんだよ俺も。阿呆か。 ちょっと脅かしてやるか。 一人で楽しそうにルーズリーフにメモを取ったり、お気に入りの洋楽を聴いたり骸骨に話しかけたりと作業に没頭している凪の背後から、お化け屋敷で後ろからついてくる幽霊(仮)のように近づく。 「凪、今日は何するの?」 どんな反応するのかいたずらしたくなって首に手を回すようにハグしてみる。あ、因みに思春期だからやめろと思った何処かの誰かさん、安心して下さい。これ、凪がいつもやっているので仕返ししているだけです。 「びひゃッッッッ」 普段のちょっとアホの子っぽさのイメージを更に定着させてくるような驚き方してくるじゃん。いやどこから其処の声出したんだろ。 「めっちゃ驚くじゃん、そんな怖かった?」 「ぁ、あたりまえ...じゃなくて、別に怖くなんかねーし!!」 「ほんとに?」 流石に怖がらせすぎたかな? 意外と涙目になっていて不覚にも少しかわいいなとか感じてしまったものの、やっぱり凪の反応は面白い。小学生から同じ習い事の仲間として認知はしていたけど、思ってた以上に反応が見ていて楽しくて、最近は定期的に凪にやられるドッキリの仕返しに同じことを繰り返しているが全然飽きない。 だっていつも反応が新鮮だし(言い訳) 「うるせえ...」 少々キレてしまったのか凪が頬を膨らませながら又何かルーズリーフに書き始める。今日の部活の予定かな? 「何?これ、今日の活動内容? ....‘’象の歯磨き粉‘’?」 一度テレビのあるコーナーで見たことはあるが何だこれ。 というかそもそも凪が何処からこのネタを掘り出してきたのかも少し気になるが、凪の書いた‘’象の歯磨き粉‘’の説明書きには、俺にはわからない言葉がたくさん並んでいる。過酸化水素水とか、ヨウ化カリウムとかマジで知らないし... でも凪の直筆で書いていることから、凪には何がどういう仕組みになっているのかも、構造とかも分かるんだろうな....。これが科学部の部長(そして理系クラス出身)の力(?)か。 「そうです!! でも詳しくは後で全員が集まってから説明してげるから、大人しく忠犬ハチ公のように待ってるんでちゅよ〜」 凪が俺をからかいながら楽しそうにニコニコしている。周りの女子にされるのは少し癇に障るのに、凪なら何故か許せるんだよな...。 変なの。                  * 16時過ぎ。 凪が再び口を開いて、 ‘’  今日は象の歯磨き粉っていう実験をやります!! ついでに上手く爆破させてたらそのまま顧問の先生の顔めがけて、日頃の思いを‘’爆破‘’させて来な!!  ‘’ と、凪特有の本日の活動内容の説明が入る。凪は基本的に実験の説明をするときは、最初に何の実験をやるのか伝えた後に何かしらネタを打ち込んでくるのが主流だ。 「象の歯磨き粉ってどんなの?」 ムードメーカー且つ皆の人気者ことわんちゃん。本名はホシュア。因みにフィリピンとブラジル人の親から生まれ、世間一般的には男子に分類される。 「よくぞ聞いてくれたわんちゃん!!簡単に言うと、‘’吹き出る高温の泡‘’ってイメージを持ってもらえると助かる!! あ、あと象の歯磨き粉は実際にそこらへんにいる象さんの歯磨き粉に使われているわけでは無く、飽くまで‘’似ている‘’からそう呼ばれているだけね!!」 詳しいな此奴... 今さっきやるって言い出したのに、このために事前に色々調べてたのかってくらいめっちゃ覚えてんな... 阿呆そうな面をしながら、‘’ほぉ〜‘’と何かの芸術作品をじっと吟味して鑑賞しているおじさんのように新しい知識を吸収した気になって皆で凪の顔を眺めている。 その影響か、少し凪の顔が熱を帯びてもじもじしているのは口に出さないでおこう。 「それじゃ、使用する薬品や必要なものについて説明するからよ〜く聞くこと!! 実験のやり方は、やりながら説明しまッ...ひゅ...」 「くしゃみですか?」 眼鏡のスラックスを履いたポニーテールの女子が、凪を心配そうに見ている。舌噛んだのかな、彼奴。 「らいひょうふ...ひょめふ...」 「ゆっくりで大丈夫ですよ」 眼鏡の女子に向かって、 ‘’ ありがとう ‘’ と、手話で伝えながら追い打ちで来たくしゃみに又やられる凪と、そのくしゃみにビビって逃げる蝉の声が聞けるのは後少しの話だ。                 * 「では、材料の説明に移ります。使う薬品は...」 くしゃみが収まり、やっとの事で説明を始めると、 「凪さ〜ん、ジャパネット風の説明でお願いしま〜す」 ホシュアが凪の会話を遮る様に急に無茶振りを投げてくる。 ‘’流石に凪先輩の話の説明中に言うのはちょっと...‘’ ぼくの事を気遣うように伊織ちゃんとセンパイこと、1年ズのうちの2人の女の子がホシュアに注意喚起を流す。 「んや、おふたりとも気遣ってくれてありがとうな!!大丈夫やで!!」 この子たち凄い良い子やから気遣ってくれとるんやろな...めっちゃ有り難いけど、もしこれで雰囲気は壊したくないしな...なんて考えながら、2人に ‘’ 2人とも気遣ってくれてありがとう!! けど、ちょっとやってみたい気持ちもあるからだいじょーぶ!! ‘’ 2人がこれで嫌な気分にならないといいな...と考えながら、一度深呼吸する。 「いや何だよジャパネット風の説明って」 ‘’透子笑いすぎ‘’と、ホシュアと透子ちゃんが楽しそうに笑っている一方、優は特に普段のポーカーフェイスを壊すこと無く、此方をガン見している。 いや...イケメンに見られると何だか照れるな...なんて思いながら、改めて説明を始める。 「それじゃあ、液晶テレビに材料と注意書きを移したからそれを見ながらぼくの説明を聞いて下さい!!」 「は〜い」 数名だけ別の空間に入っちゃっているけど、いっか。 タコ唇をかましながら液晶テレビを指でなぞりながら、赤ちゃんのように頬を膨らませながら説明に移る。 心做しか、先程ホシュアに注意を喚起してくれた2人と優の表情も曇っているように見えた。 まあ、皆個性が強すぎる故の結果だからしょうがないんだけどね!!
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