序章 ようこそ科学部へ

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序章 ようこそ科学部へ

蝉が顔を出し始める月の前月のとある週の火曜日、 6時限の終了を促すチャイムが鳴る。 凪は授業の終わるチャイムが聞こえた瞬間、まるでビールを飲んで一服をついているサラリーマンの様に大きくため息をつく。元々ぼく自体声が周囲の女子高校生と比べて低音ボイスだからか、傍から見たら高校生というより‘’ついにオッサン化した?‘’と思われても過言ではないと思う。だがしかし!!幸い今の時間は6時限目が終了した直後である為、言うてそこまで見る人間も居ないだろうと勝手に結論づけて私は呑気に欠伸をかましている。 「お前少しは女子高生らしくしろよ...」 隣の席で、サッカー部の副部長を務めている加藤君が苦笑しながら‘’女子高生‘’という部分を強調しながら話してくる。因みに加藤君は、高校で知り合い半年近く付き合っていた彼女に‘’一々言動がお母さんみたいでやだ‘’と言われて、最近別れてしまった。しかし彼はそこまで落ち込んでいないんだとか。モテ男ってこういうところセコいよなぁ...と心のなかで嘆きながら、 「ぼく、女子力は全て捨ててきたの。マッマのお腹の中に☆」 と、髪をなびかせながら加藤君にドヤって見せる。 「うわ....まじかよ...」なんて言う加藤君。加藤君は少し引き気味に言っている様に見えるけど、実際は之が日常茶飯事であり加藤君もそれを分かっていっていると思う。 「終礼するから席着け〜」 何か嬉しいことがあったのだろうか、と感じる位いつもはポーカーフェイスを極めている先生の頬が少しにやけているように見える。 ‘’ 先生今日何か良いことあったんですかぁ〜? ‘’ ‘’ もしかして彼女と週末にデートとか⁉ ‘’ ‘’ さあ、どうだろうな ‘’ 俗に言うスクールカースト上位勢の一軍陽キャ女子さんが先生に媚を売るような蜂蜜のような甘ったるい声で話しかける。ぼくとは正反対の性格だからか、ああいう風に先生に気安く話しかけて沢山お話できるのが少し羨ましく感じる。 「取り敢えずホームルーム始めんぞ〜」 そういえばあの先生、普段なら自分の中のタイムスケジュールを狂わされると凄く怒るのに、今日はちゃんと対応してくれてる...やっぱり彼女と何かあったのかな...? ホームルームだということを忘れて、一人で先生の機嫌が良い理由を探り始める。まあ探るって言ったって、普段の先生と今日の機嫌の良い先生の両方を比較して結論を見つけ出すってい... 「凪、今は想像力を働かせなくていいから俺の話を聞け。」 「あ、やば。」 「‘’あ、やば。‘’じゃなくてな...」 先生が呆れながら苦笑する中、クラス中には笑いが溢れている。だって普段ポーカーフェイスの人が急に笑いだすとか意味深でありめちゃくちゃ気になるでしょ!!(オタク全開) 「はぁ...」 先生は呆れた様子でホームルームを再開させ、数分後に無事ホームルームは終了し、委員長の「さようなら」の挨拶を合図に私や帰宅部のエースは風のように廊下を駆け抜ける。ちょっと厨二病心がうずいてつい格好良く聴こえるように言ったが、実際は廊下を‘’我が先に帰るぞ‘’と言うかのように小学校の運動会で定番のかけっこの如く走っているだけである。 だがしかし、私はその帰宅部に分類される人間ではなく、とある少しマッドな部活に所属している。 「失礼します!!今日はとてつもなく寝不足気味な凪です!!」 「あ、凪先輩今日も相変わらず早いですね」 「せんぱいこんちゃっす〜」 「こんちゃ!!今日も廊下走ってきちゃった☆」 最初に話しかけてきてくれた眼鏡が似合う美人さん。ひとつ下の後輩ちゃんだけど、迚も接しやすくて私の相談事も聞いてくれるから‘’センパイ‘’と呼んでいます。そして距離感の近さを感じさせてくれるような挨拶をしてくれたのは、伊織ちゃん。個人的な意見になるが、小動物みたいな雰囲気といい...行動パターンといい全てが私の性癖にどストライクしているこの集まりかここはと思うくらいドタイプな子が沢山集まっている。え、もし良ければ私と結婚しませんか?どう?(?)ゼクシィ読めるくない? (⚠このテンションが凪の正常です) 「凪」 「ッ優⁉今日早くない?」 危ねえ...ダブルミーニングで心臓が止まりかけたわ... この人は私の好きな人兼習い事が同じで小学生から仲良くしてもらっている。でも実際によく話すようになったのは、中学生からなんだけどね(因みに出会ったのも習い事だよ) ついでと言っては難だけど、ぼくが彼を呼ぶときは通称‘’推し‘’だ。因みに顔良しスタイル良しだけど、運動神経だけはそこそこらしい。(本人より) でも完璧すぎない感じが私の推したい理由の一つでもある。 「そう?普通だけど」 やべえ...私の勘違いかもしれないけど、このツンデレなところもマジで推せる....ツンデレが性癖の一つにもなっている私にとってはツンデレも美味しい。 「凪さん心の声が顔に出てますよ〜、まあいつもだからいいか」 ぼくの顔を覗き込むように推しと同じく習い事が一緒だった少年、通称わんちゃんがいじってくる。 「いやね⁉推しを拝むことなんて人生の半数をも出来ないかも知れないんだよ??今やらなくてどうする⁉」 やべ、地味に一時期はやった林修先生みたいな言い方しちゃた。 「こんにちは〜」 「透子ちゃんやん!!お久しぶり〜」 気まずい空気が流れかけた所で丁度透子ちゃんが来てくれた。マジでありがとう。好き。結婚しようか(重) 「凪先輩今日は何するんですか〜?」 「今日はですね!!なんと 爆鳴実験をして学校を滅ぼし、先生たちの行き場を無くしながら生徒達の最大の敵である課外を物理的かつ社会的にも吹き飛ばしたいと思います!!」 世の中の正常と言われている人間にとっては「は?お前馬鹿じゃねえの?」と思われる位阿呆臭く見られてしまうかも知れない。 だがここは科学部。マッドなヤツらの集まりだ。 部員達の歓声のようなはしゃぎ気味な楽しげな声が化学実験室内に広がる。今日も科学部は平和である。
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