海外出張

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朝になり自分の姿に驚き絶句する加津夫。 辺りを見回しても見当たらない。 着ていたパジャマが何処にも見当たらない···· 何故パンツ1枚でベッドに入って寝付けていたのだろう? 加津夫は不思議で堪らない。 「石本起きたか」 不適な笑みで高橋が声をかけてきた。 「おはようございます。高橋さんつかぬことをお聞きしますけど寝るときに来ていたパジャマは何処にあるか知りませんか? 」なんとも間抜けな質問をしているのかと加津夫は情けなかった。 「ホテルのパジャマだろう、着心地が悪くて脱いだんじゃないのか」含み笑いをしながら高橋は機嫌良く質問に答えながら加津夫の裸を舐めるような視線で頭から爪先まで見回した。 変な視線が気になり加津夫は逃げるように顔を洗いに洗面所に行った。 鏡で自分の顔に更に驚く。 整えられた眉毛(毛浅いのでボーボーではない)髭も先ほど剃ったかのように何も生えていなかった。 洗面所から出てこない加津夫の後ろから「石本お前のだ、着ていけ」高橋が渡したのは女性物の浴衣。 「高橋さん····貴方、頭おかしいですよ。自分に女装趣味はありません」無理難題を押し付ける高橋に腹が立ってしょうがない。 「良いから着ろよ。着付けてやるよ、相手の社員のハートはお前が全部鷲掴みだ」 嫌がる加津夫を無理やり押さえつけ時間が掛かったが無事着付けに成功させ最後に紅を差して完成。高橋はご満悦、加津夫は侮辱され苦虫を噛み潰したような顔になる。 「石本、いい女になったな」高橋は笑いながら写真を取った。 「口紅なんて、何処から持ってきていたんですか! 」加津夫は怒りが収まらずテイッシュを取り出し拭おうとした。 「止めろよ。別にコールガールになったわけじゃねーし、あくまでも営業手段だ。落としたり脱いだりするんじゃねぇ、分かったかチビ助」 加津夫は奥歯を噛みしめながらその場に佇み出発する高橋を待った。 涙こそ出ないが気持ちは陵辱されたようなものだった。
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