プロローグ

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プロローグ

獣人の中でも特に力の強い、密林の王者と 先祖達は呼ばれていた虎族であり、 特に希少価値が少ない白毛が多く生まれる、 白虎(はくと)財閥の次男として、此の世に生を受けた。 長男と同様に生まれながらに゙α(アルファ)゙と言う素質と性を持ち、英才教育を受けて育って来たのだが、 俺は如何にもα特有である゙威厳゙って言うのが兄より弱かった。 αは人口の1割程しか存在しない、重要な存在であり、肉食系の獣人のような見た目からして厳つい者達は、其れだけで他者を怯えさせることが出来るのだが…。 兄ば まるで、子猫が威嚇してる程度にしか見えない ゙と鼻で笑う始末。 元々白虎財閥は金融機関である、中央都市銀行の運営をしていたのだが、そっちの跡取りは、もちろん完璧な兄の方が行っている。 威厳も無ければ、αとしての根本的な素質がない俺は、一族に見捨てられ、裁縫が得意だった事もあり女性向けファッションの会社を立ち上げ、デザイナーとしての仕事を行う日々。 こんな会社、βにでも出来ると笑われてるのだが、服を作るのが好きなのだから仕方ない。 まぁ、安定した収入と趣味が延長線として楽しんでるのだから、銀行なんて堅苦しい方の跡取りなんてしなくて良かったと思うんだが…。   貴重価値の少ないα、其れだけで向けられる印象ば 理想 ゙とも言える完璧なもの。 俺ば如何なる場合゙でも完璧でなければならない…。 「 ねぇ…なんで、イッてくれないの? 」 「 え…… 」 軋むベッドのスプリングは静かに止まり。 鼻に付く汗の匂いとキツい程のフェロモンの匂いに脳が程よく溶けていた頃、俺の下にいたΩ(オメガ)は自らのは下腹へと手を当てた。 「 ナカで…イッて…くれなきゃ、ずっと物足りないままなんだけど… 」 「 も、もう少しでイケると思うんだが… 」 フラッと立ち寄ったバーで出会った、このネコ科のΩ。 雰囲気と匂いからして、普通のクロネコだと思うんだが、同じ猫科という事もあり、 お互いに興味が湧いて、ホテルに連れ込んでヤッてるのはいいが… 「 もう少しって何時(いつ)? 」 「 そ、うだな…… 」 言われた言葉に右腕に着けてる腕時計へと視線を落としていれば、彼はベッドに沈むように倒れて、連結部分へと細い指を滑らせる。 「 もう小二時間もずっと、擦られ続けて…摩擦で痛いんだけど… 」 「 ご、ごめん…抜こうか? 」 「 いや、無理に抜こうとしないで…トゲが痛いから… 」 「 あっ…そうだな… 」 猫科にはほぼ人の姿をしていても、陰茎は少し獣寄りになって、俺のペニスには人としてのサイズに合わせて、根元付近から窪みの下までびっしりと生えるトゲもついていた。 イヌ科の奴が見たら叫ぶぐらいの、最早凶器と呼ばれるソレは…。 抜けないようにするのと、刺激して排卵を促す役目もあるために、ネコ科同士の妊娠率は高いのだが……。 俺には、一つ大きな問題があった…。 「 もしかして…αのくせに、イケないの? 」 「 ッ……! 」 そう、俺は射精する事が出来なかった。 交尾への興味は失ってないし、寧ろ触れ合ったりするのは好きで、快楽は三大要素の一つでもある為に、他のα同様にセフレを作ろうかと考えるぐらい好きだ。 だが、゙射精することが出来ない゙って大きな問題があった。 だから今も生でやっていたのだが、β(ベータ)なら挿入して交尾してるだけで喜んでくれるのだが、今回の相手はΩ(オメガ)。 彼自身が避妊用の薬を飲むとしても、中出ししなければ一向に性欲が満たされてるとは思えないのだろう。   二時間も擦って、トゲによって痛みを感じながら待っていても、 一向に奥に精子が来ないと知ると、メス猫が痺れを切らして、オス猫に噛み付くのと一緒…。 態々痛みを背負ってまで、オス猫とヤる理由がΩには無いんだ。 「 はぁ、通りで…遅漏とは思ってたけど、イケないなら誘ってこないでよ。中途半端過ぎて、気分悪い 」 半笑いの後は、深い溜息を吐いては自らの腰へと触れた彼は、ゆっくりと引けば俺も気分が萎えたことで抜けたのだろう… ズルっと引き抜いた彼の尻穴から陰茎は、赤い橋がかかる。 鼻に香る微かな血の匂いに、彼は眉を寄せた。 「 いっ、た……。αだからって喜んだこっちが馬鹿だった。こんな痛いなら…相手すんじゃなかった… 」 「 ……… 」 「 痛くて動けないからさ、先帰って。射精出来ないαなんて、必要ないから 」 「 …分かった。すまない、医療費とホテル代は置いていく。それじゃ… 」 イケなくても繋がってるだけで良かった。 痛みを与えてることは知っていたけど、顔を赤く染めて尻尾を絡ませてくるのが可愛いと思っていたんだ…。 相性が良ければ、このまま番になって欲しいと言いたかったが…   ボロクソ言われた後じゃ、流石に言えるわけもなく、俺は身なりを整え札を置いてからホテルを後にした。 「 ……流石に、キツい。泣きそう…… 」 イけない…って事は知ってる。 高校生の頃に屋敷にいた使用人にヤッて貰った時も、その後自慰した時も、俺は達する事が出来なかった。   射精すらしたこと無いから、俺には精子が出ないのかと思って病院に通ったこともあるが、 検査の結果…その辺りは問題なかった。 俺が射精出来ないのは、単純な程に゙ 本能が掻き立てられて無い ゙って言われたが…そんなの知らない…。 「 運命の番と出会うのは奇跡だし、そいつと出会ったところで射精出来なかったら…。そいつの人生壊すだけだ…。だから運命なんて諦めて、その辺のΩやβにしようって思ったんだが…これから何年も共にいるだろうに、身体の相性最悪なら駄目だな… 」 射精出来ないαは使えない。 数の少ない一族の為に、繁殖して、自分達の子孫を残すことに必死な獣人にとって、子供が出来ないαなんて必要ない。 だから俺は…威厳とかの前に、使えない奴として捨てられたんだ。 俺が射精出来ないことを知った使用人が、心配して両親に言ったのかきっかけだった。 ゙ 出来損ないのα。御前は子孫が残せるΩより役立たずだな ゙ 思い出すだけで、胸が痛む。 「 こっちだって、イケなくても気分悪いさ、もういい…呑んで帰ろう… 」 気分が高まっても、その先を超えれない。 それがどれだけ気分悪いか、よがってイきまくっていた、あの黒猫や使用人には分からないだろう。
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