03 獣人と人間の差

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03 獣人と人間の差

〜 嵐 視点 〜 演出家の孔雀(クジャ)課長に見せたところ、規模と派手かさが足りない!と言われて、彼等が準備していたショーの予定を見れば納得する。 「( 流石本社、使う金額が違う )」 北支部なら、決められた予算内でどう演出してドレスや服を綺麗に見せるかって考えになるのだが、本社の場合はステージの演出から派手さがあって、観客の目を止める方を優先してる。 「( でも、これだと折角なシンプルな衣装が、演出に気を取られて霞むのでは…? )」 サマーショーは毎年、7月の丁度最初の日曜日に行われるために、水着や夏着ってことは分かる。 それを見せることで売り上げは変わるのだが、夏の暑さを防ぐ為のシンプルな作りをしてる水着や上着ばかりだろうに、花火はやり過ぎては無いのだろうか…? 「 あの、つかぬをお聞きしますが……宜しいでしょうか? 」 「 なにかしら? 」 「 ショーに出る水着はあくまで昼間用なので、夜のイメージが強い花火とは無縁なのでは?それより、グリーンガーデンの様に緑と海の青いコントラストの方が宜しいかと… 」 華やかさもいいけど、昼間に海辺で行うショーならもっと水着や服を引き立てれるショーはできるはずだと思って問えば、40%クジャクの孔雀課長は羽の両手を広げた。 「 グリーンガーデン!?そんな青臭いものを喜ぶ獣人なんていないわ!音楽を奏でて、サンバのように派手で無くちゃ!あっ、それ、サンバ〜サンバ〜 」 両手を動かしサンバのリズムで腰を振って踊り始めた、孔雀課長に周りで見てた演出課の子達も手を止めてはちょっと踊り始めた。 「( 確かに…北支部と雰囲気が違う )」 向こうは、こういった提案をすれば話し合いが始まるのだが、こっちでは既に頭の中はお祭りモード。 そんな状態だから、ショーがパッとせずに終わるのだろうと思った。 「( 問題は…上司…白虎社長の監督不行き届きかな )」 此れは少し強く言う必要があるなって思い、踊ってる彼等を放置して、オフィスに戻った。 「( ゔっぐ!?なにこの匂い… )」 エレベーターが開いた瞬間、鼻が曲がりそうな程に猛烈な香りに眉を寄せ、瞬時にスーツの腕で鼻を押さえて歩けば、オフィスではそれまで元気だった獣人達が、ぐったりとして机に顔を伏せてるじゃないか。 なにがあったの!?って驚いて、近くの三毛猫っぽい方に近づいて問う。 「 なんでこんな、凄い匂いしてるんですか? 」 「 白虎社長の顔を見たらわかるよ… 」 社長?と思って、ちょっと歩いた先にあるガラス扉の向こうにある、社長室に座ってる彼を見て納得した。 「 なるほど…… 」 僅かに口を開いてパカーンと何処か遠くを見て、フレーメン反応みたいな宇宙猫の顔をしてる事に、原因は分かる。 「 だ、ダメだ…。臭過ぎて……死ぬ… 」 「 吐きそう…… 」 イヌ科の獣人達は、オフィスの地面に倒れて両手で鼻を押さえては悶え苦しんでるのを見て、嗅覚が鋭いと悲惨なんだなって察する。 「 とりあえず、窓を開けますね 」 「「 あ、窓開けたら… 」」 換気しなきゃダメだと思い窓を開けた瞬間、ビル風によって強風が吹きやれ、彼等の机の上にあった書類達が舞っていく。 「 あぁ……俺のデザイン画! 」 「 計算途中だったのに…私の書類どこ!? 」 「( 探すの協力しますので、換気しましょうね )」 地方の低いビルとは違って、此処の風の勢いは強いなって思い、他の窓を開けて行けば、涙目だった彼等は、なんとか起き上がることが出来て、書類を拾っていく。 「 おや、換気してしまったのか… 」 「 もしかして、いけませんでしたか? 」 オフィスに戻ってきた豹牙副社長に問えば、彼は緩く首を振ってから、社長室の方を見る。 「 あの部屋だけ、開けなければいいだろ 」 「 もしかして…これって、俺の匂いを誤魔化すためですか? 」 「 まぁ、そうなるな。気にするな…此ればかりは匂いに弱い、αの体質さ 」 発情期ではない普段通りの匂いで、ここまで彼等に迷惑になるのなら… 俺は早く、彼と番になるべきだと思う。 何気なくうなじ辺りに触れては、小さく息を吐き書類を探す、彼等を手伝う。 「 探し物はこれですか? 」 「 あ、そうそう!これ、ありがとう 」 獣人達は、一度全てを集めて其れを分け直すってことはせずに、自分達の書類だけを先に探していく。 だから一向に紙が減らないんだと思い、俺は纏めてから1枚ずつを探してる人達の元へと返す。 彼等はあくまでも、目の前に与えられた仕事しか出来ない。 元々人間のような仕事なんてしない獣人達が、人間のように仕事をしようとすれば、不得意な部分が多く目立つ。 それを彼等は、改善しようとは思ってない。 今の給料と待遇がいいから…。 「( 本社に務めてるってだけで、支部の人間より100万ぐらい多く給料貰ってるんだよね。こんな程度の仕事もできないくせに… )」 一人でやった方が早く終わりそうな仕事を、何故、こんな人数が必要なのか分からない。 白虎社長は、東支部、西支部とあと2つのビルも持っているが、ここが一番…売り上げが低い。 本社が、他の支部で得た売上金を使いまくってると言っても過言ではない事に、少しだけ表情から笑顔が消えた。 「( 本社を見てこいって…こういう事なんですね… )」 ゙ 本社はここ3年、売り上げが右肩下がり。それを支部がフォローしてる。こんなにも金が掛かってる理由が知りたい。白虎社長の方には上手く話を丸め込むから…探ってきて欲しい ゙ そういった北支部の社長、久城(くじょう) 晃教(あきのり)さんが言って意味がわかる。 まだオフィスに来て1時間もしてないのに、こんなグタグタなのだから、売り上げなんて伸びるはずがない。 「( まずはあの…匂いで仕事を止めてる白虎社長に、ガッツを入れなきゃね )」 なんとしてでも何百万と掛かる、花火の演出を止めてもらわなくては…。 その為なら、多少手荒いマネはしますよ。
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