1528人が本棚に入れています
本棚に追加
/229ページ
今も、アンネが弱った木々に魔法をかけようとするのを、冷静に制する。
「アンネ様、魔法をかけるのではなく、薬草と水をあげてください」
「わかったわよ。ねえ、ジェフリー、その様っていうのはやめてって言ったわよね?」
小さいながらも腰に手を当てて言うアンネに、ジェフリー今度は大きなため息をついた。
「何度申し上げればいいのですか? 王女と呼ばれないだけありがたいと思ってください」
「何よ。その言い方。ただ様をつければいいと思ってるのはジェフリーの方でしょ!」
「そのおてんばをどうにかしないと、お嫁にいけませんよ」
アンネに背を向けて言うジェフリーに、アンネが大声で叫ぶ。
「他の大人たちの前ではきちんとしてるんだから!」
「知ってますよ」
小声で言ったジェフリーの声は、アンネには届いていないようだが、すぐにアンネはジェフリーの後を追う。
小さいころから一緒にいるお陰で、アンネもジェフリーには言いたいことが言えるようなのだ。
「ミア様、本当にごめんなさいね」
アンネのあまりの言葉に、謝ると優しいミア様は首を振る。
「フェリーネ」
愛しい人が呼ぶ声に、私は振り返った。
大好きなその笑顔は、私の心を一生離さないだろう。
あんな出会いをした私たちだからこそ、今があると心から思える。あの頃よりもずっとずっと愛するということを知ったのだから。
第一部 完
最初のコメントを投稿しよう!