CLOSER  事件No.2 「花嫁哀歌」

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 正座した膝に両手を結んだ小野寺がいうには、鹿児島県内で3年前にも同様の事件が発生したが、当時も被害者は見つかっていない。どこかに誰にも知られず遺棄されたか、それすらもわからない遺体がある。 「嫌な違和感だけがありました。鋭利な切り口から事件性を疑うべきだった、だがその時点で発見されていた身元不明遺体や損傷のある遺体で、片方の耳がない遺体はなかった」  遺体の一部だとする決定打もなく被害届も該当するような事案が何もなかった。そして時はすぎ退職が目前に迫っていた今年、再び耳は小野寺の前に現れた。 「事件性を訴えたそうですね」 「資料を読んだんですか、早いですね。ええ、おかしいだろうと感覚があってーーこんなことを言うと前時代の考えだなんて言われそうですが」 「いえ、経験に基づく感覚というのは大事です。小野寺さんは主張したが事件性は薄いとして処理された。今回の耳は右耳のようですが、今おっしゃった前回のは……」 「左耳です、私のメモには」  時宗はうーん、と唸って腕を組んだ。 「両耳がそろったわけですか。同一人物のものってわけには」
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