CLOSER  事件No.2 「花嫁哀歌」

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「最初私もそれを思いました。どこかで殺害された被害者がいて、犯人は3年前に左耳を、そしてなんらかの理由で3年越しに害者の右耳を遺棄した。どっかにいるんですよ、被害者が。誰にも見つけられず……そう思えて仕方ありません」  膝に置かれた手は、年齢よりも老けて見える。小野寺から手帳に書き記していた資料を預かりアパートを辞したら、春先の風が首元に沁みた。 「……3年か。捜索願いも出されない遺体」 「耳を除いてな」  傾きかけた陽に目をいつもより細めた時宗が頷いて、停めていた車の扉に手をかけた時に、着信音がなった。 『小野寺には会ったか』  前置きもない、樫家の声だった。 「課長、はい。今出たとこで。取れましたか、捜査権」 『少々手こずったが、想定範囲内だ。それより面白いことが見つかった』 「トカゲの尻尾みたいに耳が切っても切っても生えてくる人間、とか」 『耳のない遺体が、17体あったんだ』  陽はもう、落ちかけていた。  □  人工石の灰色が四方をおおう建物に樫家はいた。廊下に踵の音を響かせ立ち止まったその扉をおもむろに開くと、鼻先を消毒の匂いがつつんだ。 「頼んだ件は、どうなった」
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