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かつん、と踵が鳴るより早く発した言葉には、室内にいた二人の人物は顔を向けてきた。広いテーブルが三台、キャビネットにボード、天井からの照明器具、医薬品に医療器具。テーブルに向かって中腰姿勢だった小柄な人物が樫家を見ると目元に険しさを浮かべた。
「ノックくらいしたらどうなの? 社会常識でしょ」
「常識が事件を解決してくれるならね。で、どうなった」
はあ、とため息をもらした女性はキャビネット前にいたもう一人の方へちら、と視線を投げてからテーブルの隅にあったトレイを持ってきた。
「先月発見された耳がこれ。幸いにもまだ原型がそのまま残ってた。この耳の持ち主は男性、警察庁が持ってるDNAデータベースと参照したけれど、一致はなし。つまり逮捕歴や前科がある人物じゃない。で、17体の遺体はどれくらい照合できそう?」
「そう焦るな、羽島」
小柄な白衣の女性、羽島は嫌そうな色を濃くした。
「二馬力になったんじゃないの、あんたんとこの情報処理」
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