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コントロール室、と赤城がよぶ部屋には二人分の作業音がある。耳だけの遺体を事件としてあつかうと決めた樫家は、もしも同一犯の犯行であれば遺体の数はもっとあるはずだ遺体を探せ、と二人に指示した。赤城は全国の所轄と県警が持つ事件事故データベースをスクリーニングした結果、左右の耳のどちらかか両方ががない遺体は17体見つかった。
「しっかしさあ、古いのなんて十年前だよ? それも北海道から東北、中には沖縄、鹿児島、大分……関東地方まで。なんなの、この犯人。殺人して耳を切り落として、なんなの。どうすんの、耳なんて」
心底から嫌そうな顔で調査を続ける赤城の、愚痴がこの部屋で最もうるさい。
「耳……、塩漬けにして食べるとか。あ、」
しらっと紬が口にしたカニバリズムに赤城が吐き気をもよおす間に、扉がひらいてヒールの音が入ってきた。
「出たか」
「法医学教室まで運べそうな遺体っすか? 無理っすよ、無理」
「一件もか」
綺麗にグラデーションされた瞼が、きりりと厳しさを描いた。引き締まるような部屋の中、「あ、いいですか。しゃべっても」声をあげた紬は空気を読まずに続けた。
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