CLOSER  事件No.2 「花嫁哀歌」

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「亜豆に紫音、文句があるなら事件の詳細の後で言いに来い」  樫家の声が、刺さる。  事件、に意外そうな顔をしたのは赤城だった。 「え、あれって事件にやっぱなるんですか? うちの?」  うちの、を強調した赤城に樫家がうなずきモニターに画像を映した。 「先週のことだ。耳が熊本県阿蘇マゼノ渓谷で見つかった。発見された耳は当初、登山客が落下した事故死の際に損傷してのものだと思われたが、鋭利な刃物で切断された可能性があると法医学者が指摘、また当時の登山客の情報からも耳の持ち主の身元はわからなかった。一件は事故として扱われたが、ある刑事が意を唱えた。小野寺佐久治、この三月に定年退職したばかりの元刑事であり、メールの送信者だ。おそらく小野寺元刑事がうちに頼みたいのはこの耳の件だと思われるが……」  首を傾げたのは、紫音だった。 「課長、そのメールって元刑事の個人メールアドレスから来たんですか? どこからの紹介もなく、正規のチャンネルも通さず?」
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