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「俺はおまえのこと、友達とは思ってない」
「え……っ」
友達だと思われてなかったのか。だからめったにLINEを返してくれなかったのかな。ショックを受けていたら、いきなり腕を引っ張られた。目の前に赤い瞳が迫ってきて、唇がわずかに触れ合う。今のって……。私はしばらくぽかんとしたあと、真っ赤になって後ずさった。
「い、いまの何!? 新しいフクジュウの儀式!?」
「さっさと行くぞ」
「化野くんっ!」
歩き出した化野くんの腕を掴む。振り向いた化野くんは笑っていた。
私、化野くんの笑顔が好き。化野くんが──好き。化野くんが、悪い人なんかになるわけない。私は化野くんの手をそっと握った。化野くんがその手を握り返す。
「俺の彼女になれ、いちご」
「……はい」
桜吹雪の向こうで、みんなが手を振っているのが見えた。
おしまい。
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