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ちょっと早く着きすぎたので、学校の近くにある桜並木をぶらぶらと歩く。ここで、初めて化野くんと会ったっけな。桜が舞うなか、懐かしい気持ちで歩いていたら、張り出した根っこにつまずいてつんのめった。地面に倒れかけた私を、伸びてきた腕が抱き止める。私は慌てて謝った。
「すみません」
「ぼうっと歩くなよ」
私はハッと顔を上げた。化野くんだ。数ヶ月会わなかっただけなのに、すごく背が伸びてる。ひさしぶりに会話するから、どぎまぎして声がひっくり返ってしまった。
「ひ、久しぶり」
化野くんは私をじっと見て、表情を緩めた。
「おまえ、縮んだな」
「化野くんが大きくなったんだよ」
「ああ、十センチ伸びた」
「みんなは元気?」
「元気だよ。五十嵐は会長が卒業してロスだとか嘆いてるけど」
「会長と仲直りできた?」
「するわけないだろ」
化野くんは苦い顔をした。でも、化野くんは無事に6年に進級できるらしい。それだけで十分だよね。最初は話が弾んでいたのだが、だんだん話すことがなくなってしまった。目が合うと緊張して、うまく話せないのだ。私はソワソワしながら学校の方を伺う。
「みんな、もう来てるかも。いこうか」
「いちご」
歩き出そうとしたら、いきなり名前を呼ばれてドキッとした。化野くんはまっすぐな目でこちらを見ている。
「俺はおまえが好きだ」
「うん、私も好きだよ」
「そうじゃなくて……」
化野くんはもどかしそうに頭をかいて、ふっと視線を戻した。
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