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「バス来ないねぇ」
そう言って真子は屋根から少しだけ身を乗り出して道路の向こうを見ようとするが、雨がビチャビチャと降るばかりで、車が走ってくる気配がない。
屋根の下のベンチでは、美菜はスマホを眺めていた。
「どうも雨のせいで人が多いみたい。遅れてるのかも」
「えー……こんなところで待ちぼうけって……つらい」
「私たちは幸いかもよ。バス停に屋根あるし、ベンチもあるし。もしないない尽くしで待たされていたら、バスに乗らずに歩いて帰ってたかもよ」
「それは多分無理だと思う」
一時間に一本。平日だからこれでも多いほうだ。休日だったら二時間に一本なんて時刻表が平気で存在している。
バスに乗らないと学校に行くことも帰ることもできない真子と美菜にとって、バスが来なくて待ちぼうけなんていうのは日常茶飯事だった。
「仕方ない。じゃあここでウミガメのスープで遊びましょう」
「ウミガメのスープって? ふしぎの国のアリス?」
日本では世界で一番有名なアニメ会社の作品ばかりクローズドアップされるが、絵本や童話として語られる『ふしぎの国のアリス』は不条理なおとぎ話として有名だ。
それに美菜は「まあそこから取られてるんだけど」と説明する。
「まずこれは、出題者がある事象を定時する。たとえば人が死んでいると言った場合、犯人捜しをするの。それがゲームのルール」
「抽象的過ぎない?」
「そうね、これだけだとわからないと思うから、参加者は出題者にどんどんと質問していくのよ。そうしたら、出題者は【はい】か【いいえ】で答えるし、惜しかったら惜しいと教えてくれるわ。それで真相を掘り当てるの」
「ふーん……私でもできるかな?」
「じゃあ初心者の問題で行ってみましょう」
どうせバスは来ない。暇つぶしとばかりに、真子もベンチに座って美菜の出題をじっと待った。
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