停留所問答

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「はい。ある女性が死にました。その死因と犯人を答えてください」 「いきなり話が大きくなったね……ええっと、じゃあ凶器を教えて?」 「さすがにそれは教えられないから、はいかいいえで答えられる質問を考えてね」 「ええ……じゃあ、凶器は包丁?」 「いいえ」 「凶器はロープ?」 「いいえ」 「ふーん……じゃあ、凶器は薬?」 「はい、もしくはいいえ」 「えっ、これってどっち?」  はいなのかいいえなのか、どう取ればいいのか。真子が困ると、美菜は謳うように教えてくれた。 「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないってことよ。そこからどんどん質問をして、推理を重ねていってね」 「難しいねえ、これは……」  薬が凶器と尋ねたら、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないと言われた。そこでふと気付いて、真子は質問を続ける。 「その薬は睡眠薬?」 「はい」 「睡眠薬を入手したのは被害者ですか?」 「はい」 「わかった! 死因は自殺で、犯人は自分自身!」 「うーんと……死因は正解で、犯人は違うかな」 「あ、あれ……?」  普通に考えたら、死因が自殺な事件で、もう犯人捜しをする理由がなくなる。だが美菜は犯人が他にいると主張するのだ。  それに真子は「むーむーむーむー……」と腕を組む。 「ヒントってないの?」 「ないなあ。聞かないと答えられないよ」 「水平思考ゲーム難しいよ。ええっとええっと……じゃあ、睡眠薬を入手したのは、眠れないことがあったから?」 「はい」  真子は「んーんーんーんー……」と考える。健康優良児な上に、恋とは無縁だ。眠れぬ夜を過ごしたことはないし、徹夜して遊ぶより寝てしまいたい性分だった。  美菜は笑って「さあ考えて考えて」と言うので、真子もたどたどしくも考えるのだ。 「……眠れなくなるような悪いことがあったの?」 「はい」  たしかにそれだったら、睡眠薬をもらいに病院に行くだろう。しかし……真子はなんとかミステリーマンガの記述を思い返しながら口にしてみる。 「心の病気になったの?」 「はい」 「それって……誰かにいじめられたの?」 「はい」 「それって、その人の友達?」 「はい、もしくはいいえ」  また中間の答えで、真子はまごつくが。  そういえば先程美菜がスマホを触っていたことを思い出した。 「自殺した人は友達だと思っていたけれど、いじめてきた人はそう取っていなかったの?」 「はい、もしくはいいえ」 「んー……んーんー……その人って、もしかして複数?」 「はい」  そこまで考えて、ふと気付いた。
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