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放課後、彩ちゃんと一緒に歩いて駅前に出た。
彩ちゃんは隣の駅で、大学生の彼氏と待ち合わせをしているとか。
夏休み中、彼氏さんがずっとバイトしてて会えなかったそうで、久々のデートなんだと嬉しそうに道すがら聞かせてくれた。
「ねえ、心陽っち、本当に一人で平気?」
「大丈夫です。本当に今日はありがとうございました、戻ってきたら彩ちゃんの番号登録します」
「心配だから、相手が来るまでは、一緒にいてあげたいんだけどさ」
「いいです、いいです! それより早く電車乗らないと。待ち合せ遅れちゃいますよ」
「じゃあさ、スマホ受け取ったら、ショートメッセージでいいから連絡してね? 万が一変な男だったら大きい声で助け求めるんだよ」
じゃあね、明日ね、と何度も何度も振り返って、手を振る彩ちゃんを見送ってから。
JR側の駅前ロータリー、そこにある大きな柱時計の前を目指す。
十五時五十分、待ち合わせまで後一〇分。
どんな人が現れるのだろうか? とキョロキョロとあちこちに視線を向けた。
***
「あの、お願いがあるんですが」
「なになに?」
「私のスマホに電話、かけてもらってもいい、ですか?」
「へ?」
状況を把握していない彩ちゃんに泣き笑い。
「スマホ……、どこかに落しちゃったみたいでして」
「えええええええええええ!!」
クラス中の視線が一斉に私と彩ちゃんに注がれる。
「どこで落としたか心当たりある?」
「わかんないけど、バスの中か、もしかしたら」
「もしかしたら?」
「転んだあたり、かも……」
あー、と私以上に絶望的な顔をしてから、自分のスマホを手にする。
「心陽っちの番号、教えて」
彩ちゃんは真剣な顔つきで、私が伝えた番号をプッシュし、最後に発信ボタンを押して耳に宛てて。
「あれ? 電話かかったよ、心陽っち。ん? あ、もしもーし?」
かかった!? 繋がってる?
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