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「すみませーん、それ友達の電話なんですけど、どこにありました? あー、やっぱりー? 拾って下さって、ありがとうございまーす!」
彩ちゃんは時折笑いながら、そのまま私の電話を拾ってくれた人と話している。
「うんうん、うちらもそうなんで。じゃあ、放課後お願いしてもいいですかー? 新札幌駅?」
行ける? と伺う彩ちゃんの視線に頷く。
新札幌駅なら徒歩で二十分ほどだし、大丈夫。
「駅前の、時計? うん、十六時に。はいはーい、じゃあ、よろしくお願いしまーす」
頷きながらピッと電話を切った彩ちゃんは、私に満面の笑みを浮かべて。
「十六時に新札幌駅JR側のロータリー、柱時計の前でってさ」
ピッと親指を立てる。
「えっと、拾ってくれた人って」
「あ、」
「ん?」
「名前聞くの忘れた」
あははは、と悪びれずに笑う彩ちゃんに私も苦笑した。
「イケボだった。あっちも学校終わってからって言ってたし、学生だね」
「男の子なんですか?」
イケボって言ったし。
「そうそう、男の子。めっちゃ感じのいい人だったよ。バス停近くの歩道に落ちてたって言ってたから、やっぱり転んだ時なんじゃない?」
「きっとそうだね」
一瞬朝の光景がフラッシュバックしてきて、頭から振り払った。
***
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