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「めちゃくちゃ人違いでした、すみませんでした、本当にごめんなさい、ごめんなさい! すみませんでした~!」
「おい、ちょ、待て!!」
「すみませんでした~!!」
背後からかかる朔くんの声を振り切るように、追いつかれないように鞄を抱えて必死に逃げる。
十七年間生きてきた中で、一番速かったんじゃないかな。
逃げるなんて、小学校の時の鬼ごっこ以来だし、言い訳も子供じみてた、めちゃくちゃ人違いって!
朔くんって名前呼んじゃったくせに、苦しすぎるよ!
明日からバスは一本早めに乗って、二度と会わないように気をつけよう。
万が一、出会ってもわからないように、イメチェンしてしまおうかな。
眼鏡にして、ショートカットにしちゃって、ホクロでも描いてみたり?
雪崩れ込むように、校庭まで走り切って立ち止まる。
もう、会えないじゃん、朔くんに……。
「膝、……痛い」
今更になって、よみがえってくる痛み、ジンジンとした膝には血が滲んでいた。
昇降口前の外水道で傷口を洗ってから。汗と一緒に顔を伝うものを洗った。
怖い、気持ち悪い。
自分に置き換えて考えたら、本当にその通りだと思う。
一方的に顔も名前も知られてて、今まで一度も話したことないのに突然告白されるとか恐怖だったろう。
二度と関わり合いにならないし、朔くんの前に顔も出しません、だからどうか、どうか。
私のことは、明日になったら全部まるっと忘れて下さい。
神様、朔くんの記憶から今日を抹消してください!
「痛いよお……、ひーん……」
膝をかばうふりをしてうずくまって、少しだけ泣いた。
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