エピローグ 老婦人の秘密

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エピローグ 老婦人の秘密

 ターナー警部は、辻馬車に乗りながら小雨が降るロンドンの街を眺めていた。 「――――悲劇的ですね。自分の母親を殺したのが実の父親だったとは。ジャック・オットー氏とアメリア夫人が仕事だけではなく、プライベートまで仲良くしていたのは、そういう訳だったのですね」 「ああ。致死量を間違うようなヤブ医者になって、金に目がくらんだ父親と暮らすより、オットー氏に出会い、彼を実の息子のように可愛がってもらった、今の人生のほうが幸せだろう。遺産の相続も彼は断っていたようだが、アメリア夫人の強い要望があったようだ。おそらく幻覚を見るようになって、あまり自分が長くないと思ったのだろう」  アメリア夫人の遺体を解剖した際に、検死をしたジョーンズが彼女の脳に、腫瘍ができていたことを聞いた。  おそらく、彼女の見た幽霊(ゴースト)の幻覚はそれが原因なのかもしれない。   「堕落した元恋人の牧師には、金は残したくなかったんだろう。うちの女房(カミ)さんが言うには、女は昔の男のことなんてすっかり忘れるが、男のほうは未練がましいらしいぞ、エリオット」  皮肉めいた言葉にエリオット神父は溜息をついて、同じように小雨の降るロンドンの街を眺めた。 「しかしギャンブル好きの孫に遺産を食いつぶされるより、誠実な息子が遺産を相続したほうが亡くなったアメリア夫人も安心だ。さて、今夜君が来ると女房(カミ)さんに言っておいたんだ。事件解決の祝杯をあげよう」 「お気に召すままに、ターナー警部」  エリオット神父の返事を聞くと、ターナー警部は機嫌よく笑った。  完
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