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午後4時ぐらいだっただろうか。
容疑者が2人、私の書斎兼仕事部屋兼応接間に入ってきた。
1人目の容疑者はラジオDJの桃谷詩織。2人目の容疑者は女優の西九条悦子。2人とも有名人であり、メディア露出も多い。
だからこそ、私は今回の推理ショーを全国中継することにしたのだ。
西九条悦子が私に話しかける。
「あなたが、『神戸のホームズ』さんですね。私の名前は西九条悦子です。お見知りおきを。神戸の連続爆弾魔で名前は聞いていましたが、実際に会ってみると中性的な感じを覚えます。」
「確かに、私は短髪だし男っぽい部分もある。しかし生物学的には女性だ。『阿室麗子』という名前がソレを証明している。」
「なるほど。世の中には不思議な人もいるんですね。そうだ、あなたの小説『血染めのシャツ』を映画化する時は是非とも主役をやらせてください。」
「主役って、中尊寺麗子の事か。」
「はいはい。それです。」
「私の小説なんて、駄作揃いで正直映画化されるなんてあり得ないと思うんだがな。それは兎も角、今回の推理ショーであなたたちを追い詰めることになるかもしれない。それだけは覚悟出来ているか。」
「はい。もちろんです。」
西九条悦子は覚悟決めた顔をしていた。
「私も覚悟出来ています。」
当然、桃谷詩織も覚悟を決めていた。
実際に会ってみると、2人共とても殺人を犯すような顔をしていないと私は思った。
しかし、私にとって犯人の目星は残念ながら付いている。だから、どちらかが最悪の結末を演じるとしても、彼女たちのことを考えると仕方ないのだ。
午後5時頃。
テレビ局の見えないところで、私は煙草を吸っていた。
「麗子ちゃん、また煙草吸ってる。テレビ局が来ている時ぐらい自重して下さいよ。」
「いや、気持ちを落ち着かせるには煙草しかないんだ。」
「それはそうだけど・・・。」
「悩んだ時は、煙草の煙に聞いてみるのが一番いいんだ。それが私のやり方だから。」
「なるほどねぇ。私は煙草吸わないからよく分からないや。」
「実際煙草は吸わない方がいい。依存性が高いし、寿命を縮めるとも言われている。」
「ですよね。最近煙草のコマーシャル見なくなったし。」
「厚生省、いや、厚生労働省に名前が変わったんだっけ。そこの方で規制がかけられたからな。所謂自主規制ってヤツだ。」
「麗子ちゃんといると、色々と勉強になります。」
「そもそもの話、ここまで調べごとをしていないと小説家にも探偵にもなれないからな。」
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