Phase 07 全国放送推理ショー

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 「ですよね。あっ、カメラマンが一斉に書斎の方を向き始めました。」  「ああ、そろそろ約束の時間か。」  「今回の中継、上手くいくと良いんですけどね。」  「きっと上手くいくさ。だから乃愛ちゃんは陰で私を見守って欲しい。」  「分かってますよっ。」  午後7時。  テレビカメラが一斉に私を向き始める。  「えー、関西ローカルのテレビ局の皆さん、今回はわざわざ私の家に来てくださりありがとうございます。ちなみに関西ローカルのテレビ局と言いましたがこの番組は全国ネットで放送されています。正直、テレビを通しての推理ショーと言うのは初めてなので不慣れな部分があるかも知れませんが、よろしくお願いします。あっ、紹介が遅れました。私の名前は阿室麗子と言います。普段は小説家として物書きに勤しんでいますが、大阪府警の依頼で『大阪連続バラバラ殺人事件』を解決してほしいと言われました。そこで、今回は容疑者の2人にも来てもらって私の推理ショーを披露しようと思います。では、容疑者の皆さん、自己紹介をお願いします。」  「容疑者でラジオDJの桃谷詩織です。よろしくお願いします。」  「容疑者で女優の西九条悦子です。よろしくお願いします。」  人気女優の西九条悦子が容疑者として取り上げられたことにより、案の定テレビ局のカメラマンはざわついていた。もちろん、桃谷詩織もFM802の人気DJなので関西ローカルと雖もそれなりにざわついていたのは確認できた。  私は話を続ける。  「今回の事件で犠牲者は8人。有名人の死者も出ています。犯人は手袋をしており、死体に指紋を付けないようにしていました。潔癖症というよりは、証拠を残さないために手袋をしていたと見てよろしいでしょう。犯人の常套(じょうとう)手段です。話を続けましょう。もちろん、死体は全てバラバラにされていました。『バラバラ殺人事件』とマスコミが名付けているから当然でしょう。まるで京極夏彦の名作『魍魎(もうりょう)の匣』を思い出しますね。ただし『魍魎の匣』と違ってバラバラ死体は箱ではなくゴミ袋に入れられていました。黒いゴミ袋であり、大阪市の指定ゴミ袋とは異なります。そして、死体が棄てられていた場所は大阪城公園だったり阪急十三駅だったりします。西成区の簡易宿泊施設の襖に棄てられていた死体もありましたね。死体を棄てる場所をランダムにしたのは、恐らく大阪府警を(あざむ)く為でしょう。非人道的です。しかし、死体を棄てる上で犯人はあるミスを犯します。それは7人目の被害者である芦原あかねと8人目の被害者である弁天隆史の死体遺棄場所が天王寺周辺だったことです。芦原あかねが棄てられた場所は阿倍野区の『フラット電機』の本社ビルの近くでした。そして、弁天隆史が棄てられた場所はよりによって天王寺動物園の園内でした。なぜあのような目立つ場所に死体を棄てたのでしょうか、西九条悦子さん。いや、この場合は敢えて本名で呼ぶべきか。九条涼子さん。」  「えっ・・・。」  思わぬ犯人に、テレビ局のカメラマンのみならず容疑者の2人もざわつく。  「九条涼子さん、あなたは大阪市阿倍野区在住ですね。」  「はい、そうですけど・・・。だからって私が犯行を犯すなんてあり得ません!」
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