13人が本棚に入れています
本棚に追加
――そして、私はあかねちゃんだったモノに手を合わせて、その場を去った。
8人目の獲物は弁天隆史。殺害現場は天王寺動物園。
マスコミに私のことが知られようとしていたから、敢えて目立つ場所に死体を棄てた。
しかし、これが裏目に出てしまう。
私は阿倍野区在住だ。
そして、天王寺動物園は天王寺区にある。
つまり第7の事件の殺害現場から約0.5キロメートルしか離れていない。
正直、この点に関しては完全に私のミスである。
――結果として、この時の私のミスをあの女は見抜いてしまった。
ドアが開かれる。
2人の刑事が、九条涼子を取り押さえる。
「九条涼子、あなたを殺人罪の疑いで逮捕するッ!」
その瞬間は、もちろんテレビ局のカメラに大写しにされていた。
九条涼子が持っていた凶器のナイフが地面に落ちる。
背筋が凍りつくような音がする。
私は、体制を直して、改めて九条涼子に質問をした。
「改めて問います。九条涼子さん。あなたが、一連の事件の犯人ですね。」
「なぜ、分かったんですか。」
「探偵の勘ですよ、勘。」
「あなたは探偵じゃなくて小説家が本業と聞きました。そんな茶番劇に付き合っている暇なんてないんですよ。」
「あなただって女優じゃないですか。俳優、そして女優というのは『茶番劇』の元に成り立っているんですよ。残念でした。」
「くっ・・・。」
こうして、九条涼子は大阪府警の元へと送られた。それは、女優としてではなく事件の容疑者としての顔だった。
――九条涼子は、嘲笑うかのような表情をしていた。
茶番【ちゃばん】
①その場にある物を用いて行う滑稽な即興寸劇。
▽「茶番狂言」の略。
②底の見えすいた、ばかばかしい物事や振る舞い。茶番劇。
「とんだ―だ」
――明鏡国語辞典
最初のコメントを投稿しよう!