Phase 08 追憶

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 ――そして、私はあかねちゃんだったモノに手を合わせて、その場を去った。  8人目の獲物は弁天隆史。殺害現場は天王寺動物園。  マスコミに私のことが知られようとしていたから、敢えて目立つ場所に死体を棄てた。  しかし、これが裏目に出てしまう。  私は阿倍野区在住だ。  そして、天王寺動物園は天王寺区にある。  つまり第7の事件の殺害現場から約0.5キロメートルしか離れていない。  正直、この点に関しては完全に私のミスである。  ――結果として、この時の私のミスをあの女は見抜いてしまった。  ドアが開かれる。  2人の刑事が、九条涼子を取り押さえる。  「九条涼子、あなたを殺人罪の疑いで逮捕するッ!」  その瞬間は、もちろんテレビ局のカメラに大写しにされていた。  九条涼子が持っていた凶器のナイフが地面に落ちる。  背筋が凍りつくような音がする。  私は、体制を直して、改めて九条涼子に質問をした。  「改めて問います。九条涼子さん。あなたが、一連の事件の犯人ですね。」  「なぜ、分かったんですか。」  「探偵の勘ですよ、勘。」  「あなたは探偵じゃなくて小説家が本業と聞きました。そんな茶番劇に付き合っている暇なんてないんですよ。」  「あなただって女優じゃないですか。俳優、そして女優というのは『茶番劇』の元に成り立っているんですよ。残念でした。」  「くっ・・・。」  こうして、九条涼子は大阪府警の元へと送られた。それは、女優としてではなく事件の容疑者としての顔だった。  ――九条涼子は、嘲笑うかのような表情をしていた。  茶番【ちゃばん】  ①その場にある物を用いて行う滑稽な即興寸劇。  ▽「茶番狂言」の略。  ②底の見えすいた、ばかばかしい物事や振る舞い。茶番劇。  「とんだ―だ」  ――明鏡国語辞典
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