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「赤城刑事、神結刑事。話の途中で申し訳ない。新しいバラバラ事件だ。」
「新堂警部!事件現場はどこですか!」
「今度はコスモスクエア。つまり住之江区だ!」
「この時期に寒晒しの人工島で殺人事件とか正気の沙汰としか思えない。急いで現場に行くぞッ!」
「ハイッ!」
――3人目のバラバラ死体が見つかったのは、国際トレードセンターの空きテナントの中だった。
「被害者は森宮匠。31歳。職業は建築デザイナー。今回はバラバラに引き裂かれた人体だけじゃなくて、抉り取られた内臓まで見つかっている。この通り、袋の中から心臓が出てきた。」
鑑識官が森宮匠だったモノの概要を黙々と読み上げている。
内臓を見せつけられた事により、後輩刑事は思わず吐き気を催した。
「オエッ・・・。」
「刑事が臓器にビビってどうするんだ。君は検死官になれないな。」
「そりゃ、抉り取られた心臓を見たら誰だってビビりますよ。」
「まあ、それはそうだが・・・。」
僕は、なぜ大阪でこのような物騒な事件が起きたのか不思議だった。
確かに大阪といえば西成区や淀川区のように治安の悪い場所は多い。しかし、淀川区に属する十三はともかく事件現場は中央区や住之江区といった閑静な場所が多い。言われてみれば、大阪城公園にはホームレスが跋扈している場所もある。実際に第1の事件で死体が棄てられていたのはそのホームレス街の中心部である。一方、住之江区は逆に大阪市の開発の負の遺産であるコスモスクエアがある場所として知られており、その荒涼とした土地は、殺人事件を起こすのに格好の場所である。
何れにせよ、この連続バラバラ殺人事件は大阪市だけで起きている。つまり、吹田市や堺市と言った第2の都市では起きていない。僕はそう確信した。
「赤城刑事、何か考え事ですか?」
僕はどうもボーッとしていたようだ。
「いや、なんでもない。」
「しっかりして下さいよ。大阪市でバラバラ死体が3つも見つかるなんて前代未聞じゃないですか。」
「確かにそうだな。それにしても、何か被害者の名前に引っかかるモノを覚えるんだが。」
「確かに、人名が環状線になっていますね。しかも飛び飛び。」
「大坂→桜ノ宮→森ノ宮だ。偶然にしては出来すぎている。次は鶴橋か桃谷だろうか。」
「その可能性も視野に入れておく必要がありますね。」
「そうだな。それに関しては、府警の方で注意喚起をしておくよ。」
赤城翠星は大阪府警の捜査一課の刑事だ。
一応キャリア上がりの刑事だが、本人は雑草魂を信念としている。
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