大根のぬいぐるみ

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大根のぬいぐるみ

俺はまず足で歩いて気に入った物件を探した。 第一印象でピンと来ない建物に住む気はない。 住居は服装と同じで自己表現の大切な手段。 南向きの日当たりのよい部屋。 隠れ家的な趣きがあるとなお良い。 周囲が閑静な住宅街であれば最高。 どうせなら仲の良い友だちの店の近くがいいと思い、その近くの住宅街をうろうろ物色していた。 すると! 「助けて〜・・・」 微かに悲鳴が聞こえた。 辺りを見回すと、とある狭い路地の先で小学生くらいの子どもたちが騒いでいる。 イジメだろうか?! 子どもの頃イジメに遭っていた俺は走った。 1秒でも早く助けてやりたいと思ったから。 子どもたちがイジメていたのは、薄汚れた大根のぬいぐるみだった。 「気持ちわりぃ〜」 「ウエッ…くっせーっ!」 「大根おろしにしてやろうぜ」 「ドブに捨ててしまえ」 「その前に八つ裂きにしよう」 子どもたちは、なぜか殺気立っている。 「おい、やめろ。どうしたんだ?そのぬいぐるみが君たちに何か悪さをしたのか?」 「えっ?!・・」 子どもたちは俺の問いに答えず、蜘蛛の子を散らすように走り去った。 俺は大根のぬいぐるみを拾い上げた。 まるで死んだようにグッタリしている。 全身がドロドロのドブ水に浸されたらしく、溺れかけたのかもしれない。 「大丈夫か?おい、しっかりするんだ」 子どもの頃、かわいい大根の友だちがいた俺は、すっかり弱りきっている大根のぬいぐるみを何とか救ってやりたいと思った。 「頑張れよ。今すぐ手当てしてやるから」 俺は、大根のぬいぐるみを抱いて、どこかにきれいな水の出る水道はないか血眼(ちまなこ)になって探し回った。 ※興味ある方はどうぞ(笑) 子どもの頃、大根と過ごした想い出はこちら ↓↓↓↓↓↓ https://estar.jp/novels/25945842
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