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「いや、そんなんじゃなくってですね」
「くたびれてるのはあそこも同じ。若い子には無理でも、あんたならやってみる価値はあるで」
マサルは逃げ出そうと湯船から身体を起こした。しかし無扇坊は難なく彼の背中を押さえつけた。
「あら、なかなかの尻だよ。これだけプリプリなら、ちょっと痛いかもなあ」
「ワァー、やめろ~」
とマサルが叫んでも、無扇坊はニコニコ笑い続けるだけだ。
無扇坊が右手の人差し指と中指を立てて、ひと口ねぶったあと、マサルの秘所に沈めようとしたその時、
「あ」
と声を漏らすと、二本差しの指から、マサルを押さえつけていた腕から、坊の身体全体が硬直して動かなくなった。いや、一ヵ所だけ、怒張していたアレだけが、ゆっくりとうつむき始め、小さく縮んで、だらりと垂れ下がった。するとそれを機に、坊の身体は自由に戻ったようだ。
マサルは身体を起こすと、振り向いて無扇坊を見た。彼の表情からは好色さが消え、何かに戸惑っているように見えた。
「あの、無扇さま。あなたも操られていたとか?」
「違う。そんなんやない。わしゃ生まれながらのド助平でな、それに男好きだ。女には興味ないのだ」
無扇坊の元気のない声と、小さくなったアレを見て、マサルは安心して湯に身体を沈めた。
「水野くんの紹介だと聞いたから、てっきり同じ性癖の仲間かと思ってたんだが、とんだ勘違いだったの」
「すると水野さんとは・・・」
「うん。ついこの間まで、今みたいないたずらゴッコをして楽しんでいたんだが、ひょっとしたら水野くん、嫌になっていたのかなあ」
「水野さんのことはよく知らないし、お二人の関係に興味はありません。しかし阿鼻姫に操られていたわけじゃないなら、何故急に、その~ゴッコをやめたんですか」
「お前さんの守護霊に諭されたんだよ」
「守護霊って、座敷童子のことですね!」
「座敷童子とは違うな。あれは多分、お前さんの兄弟じゃないかな」
「兄弟?そんなの・・」
そこまでつぶやいたとき、マサルはあることを思い出した。
生前に母親が言ったことだ。
「あんたはホントは独りっ子じゃなかったの」
どういう状況でそんな話になったのか、マサルには全く思い出せないのだが、母がそう言ったことは間違いなく記憶にある。
とすれば、自分には夭逝した兄がいたのだろうか。
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