剛力無扇坊

6/6
前へ
/29ページ
次へ
マサルが無扇坊を慰めているうちに、ふたりが家から出てきた。 沖本さんには、葉子をこっちの車に連れて来るよう頼んである。 「芙美ちゃん。私、嬉しいんです。あなたがあたしと同じ、同性好きだなんて、思ってもみなかった」 「それって庭代さんから聞いたんでしょ。実は私、同性だけってわけでもないのよ」 「へえ!やりますね。でもそれもあたしと同じです。相手が男でも女でも、どっちでも構わないの。ふたり身体をくっつけてね、こうして触りっこするだけであたし」 と、沖本さんの手を自分の胸に押しあてた。 と、ふたりの目の前に停まっていたハイエースの後部座席のドアがゴロゴロと開けられた。 「あれ?庭代さん、なんでそんなところに?」 とキョトンとする葉子を、沖本さんが背中を押して彼女を車に押し込んだ。 「なにするのよ!芙美ちゃん、あたしを騙したの?昨日の続きをする気?」 ジタバタする葉子を座席の奥に押し込むと、沖本さんも無理やり座席に乗り込んで、ドアを閉めた。 「ほう、こいつは狐憑きに違いないわい」 と無扇坊が言うと、葉子は狐目をさらに吊り上げて無扇坊を睨み付けた。 「お前ら、アビーさまに逆らったら、ただでは済まへんでぇ!」 その言葉に無扇坊は「霊狐よ、退散せよ!降魔の印!」 と怒鳴るように発すると、左を背もたれに置き、その先で右手を垂らして人差し指を地に指した。 すると、葉子の身体はびくんッと一度波打つように震えてから、そのままガクン!気を失った。 これに驚いたのは沖本さんだ。目を丸くして、「本物や・・」とつぶやいた。 「どうですか、これで狐は出て行きましたか?」 「いや。ちょっと待ってくれよ」 と、身を乗り出して葉子のシャツを捲り上げると、丸出しになったお腹に手を当てた。 その手がズズッとパンツの下までまさぐり進むと、 「ちょっ、ちょっとそれ以上はダメですよ!」と沖本さんは坊の腕を抑えた。 「いいんだ。この子にはち○ち○付いとらんじゃろ?わしの興味の対象外じゃ」 はあ?と沖本さんが目を丸くしてマサルの顔を見ると、 「本当です」と恥ずかしそうにうなずいた。 パンツの中から無扇坊の手が戻ってみると、その指先には何本もの金色の毛が摘ままれていた。 「ちょっと、そんなことしちゃダメだって!」と驚く沖本さんに、 「よく見ろ、狐の毛だ」と彼女の目先に持ち上げた。 「これは?」 「霊狐が憑いてるかと思ったが違った。この子の腹の中にはまだ狐の毛玉がたっぷり貼り付いておる。この毛玉の持ち主、霊狐をどうにかせねば、この子が戻ることはあるまい」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加