3人が本棚に入れています
本棚に追加
マサルが無扇坊を慰めているうちに、ふたりが家から出てきた。
沖本さんには、葉子をこっちの車に連れて来るよう頼んである。
「芙美ちゃん。私、嬉しいんです。あなたがあたしと同じ、同性好きだなんて、思ってもみなかった」
「それって庭代さんから聞いたんでしょ。実は私、同性だけってわけでもないのよ」
「へえ!やりますね。でもそれもあたしと同じです。相手が男でも女でも、どっちでも構わないの。ふたり身体をくっつけてね、こうして触りっこするだけであたし」
と、沖本さんの手を自分の胸に押しあてた。
と、ふたりの目の前に停まっていたハイエースの後部座席のドアがゴロゴロと開けられた。
「あれ?庭代さん、なんでそんなところに?」
とキョトンとする葉子を、沖本さんが背中を押して彼女を車に押し込んだ。
「なにするのよ!芙美ちゃん、あたしを騙したの?昨日の続きをする気?」
ジタバタする葉子を座席の奥に押し込むと、沖本さんも無理やり座席に乗り込んで、ドアを閉めた。
「ほう、こいつは狐憑きに違いないわい」
と無扇坊が言うと、葉子は狐目をさらに吊り上げて無扇坊を睨み付けた。
「お前ら、アビーさまに逆らったら、ただでは済まへんでぇ!」
その言葉に無扇坊は「霊狐よ、退散せよ!降魔の印!」
と怒鳴るように発すると、左を背もたれに置き、その先で右手を垂らして人差し指を地に指した。
すると、葉子の身体はびくんッと一度波打つように震えてから、そのままガクン!気を失った。
これに驚いたのは沖本さんだ。目を丸くして、「本物や・・」とつぶやいた。
「どうですか、これで狐は出て行きましたか?」
「いや。ちょっと待ってくれよ」
と、身を乗り出して葉子のシャツを捲り上げると、丸出しになったお腹に手を当てた。
その手がズズッとパンツの下までまさぐり進むと、
「ちょっ、ちょっとそれ以上はダメですよ!」と沖本さんは坊の腕を抑えた。
「いいんだ。この子にはち○ち○付いとらんじゃろ?わしの興味の対象外じゃ」
はあ?と沖本さんが目を丸くしてマサルの顔を見ると、
「本当です」と恥ずかしそうにうなずいた。
パンツの中から無扇坊の手が戻ってみると、その指先には何本もの金色の毛が摘ままれていた。
「ちょっと、そんなことしちゃダメだって!」と驚く沖本さんに、
「よく見ろ、狐の毛だ」と彼女の目先に持ち上げた。
「これは?」
「霊狐が憑いてるかと思ったが違った。この子の腹の中にはまだ狐の毛玉がたっぷり貼り付いておる。この毛玉の持ち主、霊狐をどうにかせねば、この子が戻ることはあるまい」
最初のコメントを投稿しよう!